整骨院の経営が厳しい本当の理由|2026年7月改定で保険はもう限界

「整骨院の経営はもう厳しい」

そう言われて、うんうんとうなずいてしまう先生は多いと思います。実際、僕のところに来る相談も、ここ数年は接骨院・整骨院の先生からのものがずいぶん増えました。

先に、僕の結論を言っておきますね。

保険のみの整骨院で食べていく道は、もう残っていません。

これはあなたの技術が足りないからでも、努力が足りないからではありません。制度のほうが、保険だけで生活していける形になっていないんです。そして2026年7月の療養費改定で、それがほぼ決定的になりました。

だから僕のスタンスは一貫していて、接骨院がこれから真面目に法律を守って経営していくなら、自費を柱にするしか道はない。これしかないと思っています。

この記事では、なぜそう言い切れるのかを厚生労働省の一次資料で示します。そのうえで、自費に軸足を移していくための具体的な手順をお伝えします。

僕はもともと整体院とリラクゼーションサロンを経営していました。今は治療院専門のコンサルタントとして、これまで何百院という接骨院・整骨院に関わってきています。その立場から見えている「沈んでいく院」と「そこから抜け出す院」の違いも書きますので、最後まで読んでみてください。

整骨院の経営が厳しいのは気のせいやない。数字がそう言うてます

まずは感覚の話をいったん脇に置いて、数字で現在地を確認しますね。ここを飛ばすと、いつまでも「なんとなくしんどい」から抜け出せないですから。

保険のパイは8年で約3割減っている

厚生労働省の柔道整復療養費検討専門委員会に出ている資料から、柔道整復療養費の推移を抜き出しました。あわせて、国全体の医療費(国民医療費)も並べています。

年度 柔道整復療養費 国民医療費
平成26年度(2014) 3,825億円 40兆8,071億円
平成30年度(2018) 3,278億円 43兆3,949億円
令和元年度(2019) 3,178億円 44兆3,895億円
令和2年度(2020) 2,831億円 42兆9,665億円
令和3年度(2021) 2,867億円 45兆359億円
令和4年度(2022) 2,747億円 46兆6,967億円

見てほしいのは、右と左で向きが逆だということです。

国全体の医療費は、この8年で約14%増えています。高齢化が進んでいるんやから当然ですよね。ところが柔道整復療養費だけは、3,825億円から2,747億円へ、約28%減っています。令和4年度は前年度からさらに4.2%のマイナスです。

令和2年度にガクッと落ちているのは、コロナ禍での患者数の減少も要因のひとつだと資料にも注記されています。ただ、行動制限が明けた令和4年度もさらに減っているわけですから、コロナだけの話ではないんですね。令和3年度に一度だけ持ち直したほかは、ここ10年ほぼ一貫して減り続けています(公表されている最新は令和4年度分です)。

つまり、世の中の医療費は増えているのに、柔整の保険だけがひとり負けしている。ここが出発点です。

院はもう増えていない。でも柔道整復師は増え続けている

次はもう一方の数字です。厚生労働省の「衛生行政報告例」で、施術所の数と柔道整復師の数を見ます。こちらは2年ごとの調査です。

各年末 柔道整復の施術所 就業柔道整復師
2014年 45,572か所 63,873人
2018年 50,077か所 73,017人
2020年 50,364か所 75,786人
2022年 50,916か所 77,632人
2024年 50,924か所 78,666人

ここ、けっこう意外やと思います。

ネットの記事にはたいてい「整骨院は増え続けている、だから厳しい」と書いてあります。でも直近の2022年から2024年で見ると、施術所は50,916か所から50,924か所。2年でたった8か所しか増えていません(増減率0.0%)。院の数はもう頭打ちなんですよ。

一方で柔道整復師は、同じ2年で1,034人増えて78,666人になっています。10年で見ると、施術所は約12%増なのに対して、柔道整復師は約23%増。人の増えるペースが、院の増えるペースの倍なんですね。

これが意味するのは「これから競合がどんどん増える」ではありません。もう増え切ったあとの椅子取りゲームが始まっている、ということです。しかも椅子(保険のパイ)は毎年小さくなっていて、座りたい人は増え続けている。

1院あたりの保険売上は、839万円から540万円になった

この2つの数字を割ってみます。ざっくりした割り算なので、そのつもりで見てください。

2014年:3,825億円 ÷ 45,572か所 = 1院あたり約839万円

2022年:2,747億円 ÷ 50,916か所 = 1院あたり約540万円

8年で約36%のマイナスです。年間300万円くらい、保険から入るお金が減った計算になります。

整骨院の経営が厳しい理由を示す図解。柔道整復療養費は約28%減、施術所は約12%増、柔道整復師は約23%増

もちろんこれは相当に粗い試算です。療養費は年度の数字で施術所数は年末時点のものだし、柔道整復師が開いている自費中心の院も「柔道整復の施術所」に含まれています。実際の1院あたりの金額がこの通りというわけではありません。

ただ、向きと大きさは間違いなくこうなっています。ここから家賃と生活費を出すことを考えたら、保険だけでは足りないというのが率直なところやと思います。

もしあなたの院の売上がじわじわ下がっているなら、それはあなた自身がさがってきたというよりは、立っている地面のほうが沈んでいるんですね。

そもそも「保険が使える患者さん」が、ほとんど来ていません

ここからが本題です。なぜ僕が「保険に先はない」と言い切るのか。理由は3つあって、1つめがこれです。

保険が使えるのは、急性の外傷だけです

僕に言われなくても、間違いなくすべての柔整師がわかっていることですが、保険が使えるのは外傷です。厚生労働省は、接骨院・整骨院で健康保険が使える範囲をこう説明しています。

整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に保険の対象になります。

そして、こうも書いてあります。

単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります。

さらに、これもまた柔整師なら誰でも知っていることですが、骨折と脱臼は緊急の場合を除いて医師の同意が必要ですし、病院で同じ負傷を治療中なら対象外です。

つまり保険で診られるのは、急性の外傷だけ。慢性の腰痛も、肩こりも、疲労も入りません。ここは制度としてずっとそうなっていますし、これが変わることはおそらくないでしょう。

でも、急な外傷で接骨院に来る人は、そんなに多くない

ここが現実の話です。

転んで手をついた、階段で足をひねった、そういう「明らかな急性外傷」が起きたとき、多くの人はまず整形外科に行きます。レントゲンが撮れるからです。骨に異常がないかを見てもらってから、という流れが普通なんですね。ここを接骨院に直行してくる人は、そう多くはないと思うんですね。

これは数字にも出ています。厚労省が令和6年10月分の療養費支給申請書を抽出して分析した資料によると、柔道整復療養費の傷病名の99%以上が捻挫と打撲(挫傷を含む)でした。骨折・脱臼・不全骨折は、合わせても1%に満たないということです。

そして受療者の年齢分布を見ると、いちばん多いのは70歳から79歳。同じ資料で3年分の推移を見ても、この傾向は変わっていません。

若い人が部活でケガをして駆け込んでくる、という昔のイメージとはずいぶん違いますよね。今の保険診療の実態は、高齢の患者さんの捻挫・打撲が中心なんです。

だから「保険だけ」では、そもそも数が足りない

ここまでを並べると、答えははっきりします。

制度どおりに、本当の急性外傷だけを保険で診る。それで一人院の家賃と生活費を作れるだけの人数が来るかというと、来ないんですよ。母数がそこにないんです。

もちろん、慢性の痛みを負傷ということにして請求する、という話は昔からあります。というかみんなやっていたし、今でも多くの接骨院でやっていると思います。でもそれは制度上できないことですし、後で書くとおり、そういうやり方も、徐々に通らなくなってきています。

ルールを守れば数が足りない。ルールを守らない道はふさがれつつある。 これが僕が「保険に先はない」と言う一番の理由です。

2026年7月の改定で、多部位と長期はさらに厳しくなりました

理由の2つめがこれです。2026年(令和8年)7月1日から、柔道整復療養費の新しい料金と算定ルールが施行されました。告示と通知は同年6月1日付で出ています。

改定率そのものは+0.60%(本体0.14%に、物価上昇への対応分0.46%を上乗せ)。数字だけ見れば「上がった」んですが、中身を見るとそう単純ではありません。

いちばん大きいのは、2部位目に逓減が入ったこと

今回の改定の目玉は、ここです。

これまで、打撲・捻挫の後療料などの逓減(減額)は3部位目からでした。3部位目が所定料金の60%。それが今回、2部位目にも80%の逓減が新しく入りました。対象は後療料だけでなく、温罨法料・冷罨法料・電療料も同じです。

同時に、後療料(打撲・捻挫)は505円から550円へ、45円の大幅な引き上げになりました。ここだけ見ると増収に見えます。

でも、部位数ごとに1回あたりの後療料の合計を計算するとこうなります。僕が改定内容にそって計算したものです。

施術部位数 改定前 改定後
1部位 505円 550円 +45円
2部位 1,010円 990円 ▲20円
3部位 1,313円 1,320円 +7円

2026年7月の柔道整復療養費改定による打撲・捻挫の後療料の変化。1部位は45円増、2部位は20円減、3部位は7円増

1部位で完結する施術は増える。2部位はむしろ減る。3部位はほぼ変わらない。

メッセージははっきりしていますよね。「1部位をきちんと診る施術は評価する。部位を重ねて稼ぐ形はもう伸ばさない」ということです。

料金表の細かいところも同じ方向を向いています。初検料は1,550円から1,560円、再検料は410円から420円、施療料は760円から770円。上がっていますが、いずれも10円です。物価上昇分を考えたら、実質は横ばいと見るのが妥当やと思います。

初検料を取り直す形も、ふさがれました

もうひとつ大きいのが初検料のルール変更です。

改定後は、施術の終了または中止から3か月以内に、同じ施術所で施術を行った場合、当初とは異なる負傷や部位であっても初検料が算定できなくなりました。1か月以上3か月以内であれば再検料は算定できますが、初検料は取れません。

これが何を意味するかは、業界にいる先生ならすぐわかると思います。部位を入れ替えて初検を取り直していく、いわゆる「部位転がし」の形が、料金の面から成り立たなくなったということです。

長く・多く通う患者さんは、償還払いに切り替えられます

さらに、患者ごとに受領委任から償還払い(患者さんがいったん全額払って、あとから保険者に請求する形)へ変更できる事例に、こんな基準が追加されました。

直近1年間に通算8か月以上かつ通算9部位以上について施術を受けている患者

この項目は、柔整審査委員会の重点審査項目にも位置づけられました。

償還払いに切り替えられると、患者さんはその場で全額を払うことになります。現実問題として、そうなれば通院は続きにくくなりますよね。長期かつ多部位で回している院にとっては、かなり重い変更です。

なお長期の逓減自体も、5か月を超える施術は75%、5か月を超えてなおかつ1か月あたり10回以上の頻回な施術は50%と、すでに厳しくなっています。

審査する側も、少しだけ本気になってきました

2026年4月30日の柔道整復療養費検討専門委員会には、「いわゆる『部位転がし』に関する調査について」という資料が出ています。

厚労省が2025年12月から2026年1月にかけて、健保組合・協会けんぽ・国保保険者・後期高齢者医療広域連合・国保連合会を対象に調査したもので、全国47都道府県の国保連合会が「部位転がし疑い」を抽出するための条件を設定していることが整理されています。

抽出条件の中身も具体的です。「3か月経過直前に治癒となり、翌月に負傷が追加」「1部位のみ治癒させ、新たな負傷名を追加した継続施術パターン」「3〜4か月で一旦治癒し、その後、新たな病名で初検料を算定」といったものが並んでいます。

要するに、どういうパターンが不自然かは、もう全部把握されているということです。

まとめると、保険は「締まる方向」にしか動いていません

今回の改定の方向を整理すると、こうなります。

変わったこと 内容 一人院への影響
2部位目の逓減(新設) 後療料・罨法料・電療料が80%に 2部位で回している院は実質減収
後療料の引き上げ 505円→550円 1部位中心なら増収
初検料の算定制限 終了・中止から3か月以内は算定不可 部位を替えた初検の取り直しが不可
償還払いへの変更事例の追加 1年で通算8か月以上かつ9部位以上 長期多部位の患者が続けにくくなる
明細書の見直し 「明細書発行加算」1回10円、負傷名・部位の記載欄を追加 何をやったかが患者と保険者に見える

上がったのは、1部位で完結する真っ当な施術の単価だけ。それ以外は全部、締める方向です。

そして委員会の資料には「引き続きの検討事項」として、2部位を含む複数部位の施術の実態把握、近接部位の算定方法の見直し、施術管理者要件の見直しなどが並んでいます。次の改定でも、この方向は続きます。

結論。自費を柱にするしか道はありません

理由の3つめ、というより、ここまでの帰結です。

保険の対象は急性の外傷に限られていて、その患者さんはそもそも多くない。制度の側は多部位・長期・初検の取り直しを一つずつふさいでいる。療養費の総額は8年で約3割減り、担い手は増え続けている。

この4つが同時に起きている以上、保険で一人院の生活を成り立たせる道は、もう現実的ではありません。

だから僕は、接骨院の先生には「自費をやるかどうか」ではなく「自費をいつから柱にするか」を考えてくださいと言っています。足すかどうかの話ではないんです。柱を差し替える話です。

ここから先は、そのための具体的な話をします。

沈んでいく院と、抜け出す院。分かれ目は3つ

何百院と見てきて、同じ地域・同じ条件でも、沈んでいく院と持ち直す院がはっきり分かれます。技術の差ではないです。分かれ目は3つでした。

分かれ目1:自費を「足す」か、自費を「柱」にするか

持ち直さない院は、保険のメニューの横に自費メニューを1つ置いて、聞かれたら出す、という状態で止まっています。これだとなかなか売れません。

なんで売れへんのか。患者さんの側に「ここは安いところ」という基準がもうできあがっているからです。何年も数百円で通ってきた人にとって、あなたの院の相場は数百円なんですよ。そこにいきなり5,000円のメニューを見せられても、比較の対象になるのは自分の中の「いつもの値段」です。だから高く見える。技術の問題ではなく、基準の問題なんですね。

抜け出した院は、自費を「足す」のではなく、自費で来る新しい患者さんの流れを別に作っています。今いる保険の患者さんを説得しにいくのではなく、最初から自費で来る人を集める。こっちのほうが、実はしんどくないです。

このあたりは別記事にがっつり書いています。あわせて読んでください。

⇒ 保険中心の接骨院で自費治療を高単価で売る方法

分かれ目2:新規の数で埋めるか、単価と継続で埋めるか

売上が下がったとき、多くの先生がまず新規集客に走ります。チラシを撒く、ポータルサイトに載せる、割引をつける。

気持ちはめちゃくちゃわかります。僕もそうでした。でも一人院でこれをやると、たいてい「忙しいのに儲からない」状態になります。1日15人診て、単価は1,000円台、朝から晩まで動いてヘトヘト。それで月商は上がらへん。

数で埋めようとすると、体力のほうが先に尽きるんですね。一人院の売上には物理的な天井があります。1日に診られる人数は決まっているし、あなたが倒れたら売上はゼロになる。

抜け出す院は、同じ人数でいくらになるかのほうを先に触ります。単価と、来続けてもらえるかどうか。ここは後半の手順で具体的に計算します。

分かれ目3:やらないことを決めているか

3つめは地味ですけど、これが一番効きます。

厳しくなると、人はいろんなことに手を出します。インスタも始めて、LINEも入れて、ポータルにも登録して、新しい機械も入れて、セミナーにも行く。全部が中途半端になって、どれが効いたのかもわからないまま疲れていく。

僕が主宰しているコミュニティでも、伸びる先生ほどやることが少ないです。1つに絞って、3か月続けて、数字を見て、続けるか捨てるかを決める。この繰り返しなんですね。

空いた時間の使い方については、以前こんな記事も書きました。

⇒ 暇な治療院がやるべきこと

保険中心から自費を柱にする5つの手順

ここからは具体的な手順です。上から順にやってください。順番に意味があります。

整骨院の経営が厳しいときに自費を柱にする5つの手順の図解。数字を出す、単価を試算、自費メニューを1つ作る、今いる患者さんに伝える、やめることを決める

手順1:まず数字を出す。話はそれからです

いきなり集客の話をしたい気持ちを抑えて、最初にやるのはこれです。直近3か月ぶんでいいので、次の5つを紙に書き出してください。

1:月の売上(保険と自費を分けて)

2:月の新規患者さんの数

3:月の延べ来院数

4:平均単価(売上 ÷ 延べ来院数)

5:あなたが院にいる時間(週に何時間か)

とくに1番の「保険と自費を分けて」が大事です。今の売上のうち何割が、これから細っていく側に乗っているのか。ここを見ないまま対策は打てません。

経営が厳しいと相談に来られる先生に「今の平均単価はいくらですか?」と聞いて、即答できる人は半分もいません。ここが出せていないと、打った手が効いたのかどうかも判定できないんですよ。

しんどい作業に聞こえるかもしれませんが、逆です。数字を出すとどこが問題なのかがはっきりして、悩む対象が減ります。「なんとなく不安」がいちばん体力を削りますから。

手順2:単価を1,000円上げたらどうなるかを計算する

数字が出たら、次はこの計算をしてください。

今の延べ来院数のまま、平均単価だけが1,000円上がったら、月の売上はいくら増えるか。

たとえば1日8人、月22日稼働なら延べ176人です。ここに1,000円をかけると、月17万6,000円、年間で211万円。新規をひとりも増やさずに、です。

同じ211万円を新規集客だけで作ろうとしたら、何人集めて何回来てもらう必要があるか。考えるとちょっと気が遠くなりますよね。単価というのは、それくらい効きます。

もちろん「はい上げます」で上がるものではないです。値段に見合う中身と、それをちゃんと伝える問診・説明が要ります。でもまずは「上げたらどうなるか」を数字で見る。ここを見ずに「うちの地域では無理」と決めてしまう先生が、本当に多いんです。

手順3:自費メニューを1つだけ作る

いくつも作らないでください。1つです。

作るときに決めることは4つだけ。

・誰のためのメニューか(症状ではなく「どういう人か」で書く)

・何分の予約枠で、いくらか

・保険の施術と何が違うと説明するか

・初回にどう案内するか

ここで多くの先生が止まります。「保険と自費で技術的にそんなに変わらへんのに、何倍もの値段をもらっていいんやろか」と。真面目な先生ほどここで詰まる。

これについては前にがっつり書いたので、そちらを読んでほしいです。結論だけ言うと、うまくいっている院も中身をそこまで変えていません。変えているのは、集める人と、伝え方と、請求する側のマインドです。

⇒ 保険中心の接骨院で自費治療を高単価で売る方法

料金を提示することにどうしても気後れしてしまう場合は、こちらも参考になると思います。

⇒ 治療技術に自信が持てずに経営難の先生へ

手順4:新規より先に、今いる患者さんに伝える

メニューができたら、広告を出す前にやることがあります。今来てくれている患者さんに伝えることです。

整骨院の院長が患者さんに案内の紙を見せながら、これからの通い方を説明している場面

理由は単純で、いちばん近くにいる人がいちばん動きやすいからです。あなたのことをすでに知っていて、通う習慣もある。新規のゼロからの関係より、はるかに早い。

ここで役に立つのが、今回の改定で見直された明細書です。負傷名や施術部位の記載欄が増えて、何をやったかが患者さんに見える形になりました。これを「面倒が増えた」と捉えるか、「自分の施術を説明する材料が増えた」と捉えるかで、その後がだいぶ変わると思います。

伝え方は、施術中の会話でもいいですし、院内の掲示でもいい。今の時代なら、LINEやメールで届けるのも普通に選択肢に入ります。紙の案内にこだわらなくていいと思います。

ただし「売り込み」にならないよう気をつけてください。全体の1〜2割くらいが案内、残りは役に立つ話。この配分を守ると嫌がられにくくなります。

手順5:やめることを1つ決める

最後です。新しいことを1つ始めたら、今やっていることを1つやめてください

一人院の資源は時間だけです。時間を作らずに新しいことを足すと、たいていどこかが雑になります。反応のないポータルサイト、更新の止まったSNS、誰も見ていない院内POP。心当たりありませんか。

やめるのは怖いです。でも数字を見て決めれば怖くないですよ。手順1で数字を出したのは、このためでもあります。

「週休2日で月商100万」から逆算すると、必要な人数が見えます

ここまでの話を、いちばん具体的な形にしておきます。

僕は主宰する塾やコミュニティで、週休2日・6割稼働で目標の売上を作ろう、という話をずっとしています。ボロボロになるまで働いて売上を作るやり方は、一人院ではもたないからです。

週休2日だと、月の稼働はだいたい22日。月商100万円なら、1日あたり45,455円です。この1日45,455円を、単価別に必要な人数へ直すとこうなります。

平均単価 1日に必要な人数
4,000円 約11.4人
5,000円 約9.1人
6,000円 約7.6人
7,000円 約6.5人
8,000円 約5.7人
10,000円 約4.5人

僕のコミュニティ(加藤会)で自費の施術料金をアンケートしたとき、いちばん多かった区分は6,000〜6,999円でした。仮に6,000円だとすると、1日8人弱で月商100万円、しかも週休2日という計算になります。

さっきの改定後の数字と比べてみてください。打撲・捻挫の後療料は1部位で550円です。ここに罨法料や電療料を足しても、1回あたりの単価はたかが知れています。保険で1日30人を回して届かない月商に、自費なら1日8人で届く。

どちらが体を壊さずに続けられるかは、考えるまでもないと思います。

苦しいときほど、いちばんやったらアカンこと

最後に、これだけは言わせてください。

売上が落ちてきたときにいちばんやったらアカンのは、戦略のない値下げです。

近所の院が2,980円にしたからうちも、というやつですね。一人院がこれをやると、忙しさだけが増えて手元に残らないという、一番しんどい形になります。しかも一度下げた値段を戻すのは、上げるよりずっと大変です。

規模の大きい院やチェーンと、価格と便利さで勝負したら勝てません。資金力も回転数も向こうが上ですから。一人院が勝負すべきなのは価値のほうです。この話は昔からずっと書いています。

⇒ 中途半端な治療院は潰れる

⇒ 1人治療院の経営を成功させる5つの秘訣

整骨院の経営が厳しいのは事実です。数字でもはっきりそう出ています。でも、厳しくなっているのは「保険に乗っている部分」であって、あなたの腕や、患者さんとの関係そのものが値下がりしたわけではありません。

沈んでいく地面の上に立ち続ける必要はないんです。乗る場所を変えれば、まだやりようはあります。まずは手順1、自分の売上のうち何割が保険なのかを出すところから始めてみてください。


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この記事で使った数字と制度の出典

・保険の対象範囲:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」

・2026年7月の改定内容:厚生労働省 保発0601第4号・第5号、保医発0601第1号(いずれも令和8年6月1日付、令和8年7月1日施行)

・改定の全体像・料金表:社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会 第35回(2026年4月30日)配布資料「柔道整復療養費の令和8年度料金改定(案)」

・部位転がしの調査:同委員会 第35回 配布資料「いわゆる『部位転がし』に関する調査について」

・傷病名の内訳・年齢分布・療養費の推移:同委員会 第32回(2026年1月30日)配布資料「柔道整復療養費の令和8年度改定の基本的考え方(案)について」

・施術所数・就業柔道整復師数:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」

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