接骨院・鍼灸院・あん摩マッサージ指圧院など国家資格を持っている治療院のチラシ集客でもっとも壁になるのが広告制限です。
この記事ではそういった接骨院などのチラシ集客について書きました。民間資格の先生と比べてかなり苦労している部分だと思いますが参考にしてください。
あはき法と柔整法の広告制限
あなたが柔道整復師やあはき師の国家資格を持っているのであれば、チラシなどの広告には規制があるこは当然ご存じだと思います。広告について書かれている、あはき法7条と柔道整復師法24条にはそれぞれ以下のように書かれています。
第7条 あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。
一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所
二 業務の種類
三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
四 施術日又は施術時間
五 その他厚生労働大臣が指定する事項2 前項第1号乃至第3号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。
その他厚生労働大臣が指定する事項(平成11年3月29日付 厚生省告示第69号)
1.もみりょうじ
2.やいと、えつ
3.小児鍼
4.医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意書が必要な旨を明示する場合に限る。)
5.予約に基づく施術の実施
6.休日又は夜間における施術の実施
7.出張による施術の実施
8.駐車設備に関する事項
第24条 柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。
一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
三 施術日又は施術時間
四 その他厚生労働大臣が指定する事項2前項第1号及び第2号に掲げる事項について広告をする場合においても、その内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない
※その他厚生労働大臣が指定する事項
一 ほねつぎ(又は接骨
二 医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
三 予約に基づく施術の実施
四 休日又は夜間における施術の実施
五 出張による施術の実施
六 駐車設備に関する事項
接骨院・鍼灸院はチラシ集客を諦めたほうがいい?
これらの法律はポジティブリストと呼ばれています。簡単に言うと、「こんなこと書いてはダメ」という表現ではなく、「書いていいことはこれ。それ以外はダメ」と記載されています。
見ればわかりますが、ほとんどなにも書けません。施術する資格者の情報も名前と資格と住所のみで、それ以外のことは書いてはダメなんです。この法律が作られた当初はホームページなんてものはなかったんで、当然のことながらホームページのURLを書いてもいいよと記載されていないので、ポジティブリストの原則からすると掲載はNGとなります。
つまりなーーーにも掛けない。なのでこの法律を遵守して作成したチラシを配布しても費用対効果の得られる集客は難しいです。まだ接骨院が保険の患者さん集客するためのチラシなら成果が得られる可能性はありますが、鍼灸院などで自費施術を集客しようとしてもかなり難しいです。
そういった事情もあって、国家資格者でチラシ集客をされる先生は非常に少ないです。
では、接骨院や鍼灸院、マッサージ院ではチラシ集客は諦めるしかないのでしょうか? チラシそのものを作る必要がないのでしょうか?
この質問に対する答えは「No」です。国家資格を持っていてもチラシで集客している治療院は、少ないですが存在します。そしてチラシは必ず作っておいてほしい集客ツールです。
接骨院・鍼灸院がチラシで集客する方法
接骨院や鍼灸院、マッサージ院などがチラシで集客するには、二つの方法が考えられます
- 広告制限を守ったチラシで集客する
- 広告にあたらない状態(広報)でチラシを配布する
広告制限(柔整・あはき)を守ったチラシで集客する
柔整法やあはき法を順守したチラシは効果が得られない可能性が高いです。しかし先に書いたように、保険診療がメインの接骨院であればそれでも効果が見込める場合はあります。特にあまり競争の激しくない地域であればやってみる価値はあります。
法律を守っているので、チラシに捻挫や脱臼、打撲といった保険での適応症すら書けません。だから実際に来院されるのはおそらく外傷ではなく、肩こりや腰痛の慢性痛の患者さんばかりになる可能性が高いです。
あとはいかに問診で受傷機転を明確にしていくかの勝負になるかと(かなり苦しいですが・・・)まぁ、これはチラシ集客に限らず普段からすべての患者さんでやっていることかもしれませんね。
また、個別に配布しなくても、院前などに設置だけでもしておくことで集客効果は見込めます。広告制限を守ったチラシなんて、と諦めずにできることはまずやっておきましょう。
広告にあたらない状態で配布する
あはき法の第7条や、柔道整復師法の第24条は、広告について書かれたものです。なので、その印刷物が広告にあたらない場合は規制の対象になりません。
では、広告とはなにか?という広告の定義はというと、接骨院や鍼灸院などでは明記されたものがありません。そのため、判断基準としては医療広告ガイドラインが用いられることが多いようです。
医療広告ガイドラインには、広告の定義を以下の3つのいずれの要件も満たす場合としています
①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
③一般人が認知できる状態にあること(認知性)引用:医療広告ガイドライン
1番の受診を誘因すること、2番の名称の特定に関しては、これがなければ集客できないので外せません。なので治療院の集客を考えた場合、3番がもっとも重要になってきます。
つまり、3番の認知性の要件を満たしていない場合は、広告ではないので、7条や24条の制限を受けないと考えられます。
例えば院内にて既存の患者さんに渡すパンフレットなどは規制の対象にはなりません。なぜなら3番でいうところの(不特定多数の)一般人ではないからです。既存の患者さんに情報提供や広報をしただけという解釈が、ガイドラインでも明記されています。
ということで、この3番を満たさない状態を作ることができれば、広告制限を受けずに配布することは可能になります。
※追記:医療広告ガイドラインは改正され、現在は認知性は満たさなくても広告ということになりました。でも今のところ治療院は旧ガイドラインの3つの広告定義を根拠にしていると判断されます。理由はホームページが広告扱いになっていないからです。
治療院でも広告ガイドラインをつくるべき検討会が開催されていて、ほぼ概要がまとまっています。が、コロナの影響もあって2019年でストップしたまま。コロナが明ければまた再開され動き出すでしょう。ここが決まればこのセクションで書いた「広告にあたらない状態」は変化する可能性があります
接骨院チラシが広告にあたらない具体的な手法は?
実際に僕のクライアントではよくやっているのが、近隣店舗の営業です。自分の治療院の近隣に営業活動をして、自院のチラシをその店舗のお客さんに渡してもらう方法です。
これなら、一般人に向け無差別に認知できる状態ではなく、特定の顧客に情報提供をしているとも取れます。これまで多くの保健所に問い合わせをしていますが、8割~9割ぐらいの保健所で「広告にはあたらない」との判断をもらうことができています。
とても面倒くさい手法ではあります。得手不得手もあるでしょう。地域差もあるかもしれません。しかし、きっちりやればそこそこ安定した集客が見込める方法ではあります。
詳しい方法などはここでは割愛しますが、「営業活動」というよりは、近隣店舗との関係性を構築するといったほうがいいかもしれません。お互いに質のいい顧客を紹介し合うといった感じでしょうか。
いいものを、その人にとって必要なものを紹介されれば人は喜びます。逆に変なものを紹介してしまうと、信用をなくします。ということは、いい商品を作る。誰にとっていい商品かを明確にする。というのが出発点で、その上でそれを快く紹介してくれるための人間関係を構築することが大事なのです。
その上で説明のために手渡せるチラシがあって初めて集客がうまく機能し始めます。
※追記:このセクションの内容も今後治療院の広告ガイドラインができれば変わる可能性があります
手渡しできる印刷物は常に手元に置いておく
国家資格を持っている先生で、広告制限があるからといってチラシなどの印刷物を作っていない先生がいます。しかしこれは僕の考えではもったいないことをしていると考えます。
例えば、飛び込みで来られた患者さんですぐに施術ができない場合はよくあることです。そんな場合にそのまま返してしまうのはあまりにももったいないです。しかし多くの治療院でこれをやってしまっています。
そんなときになにか手渡す印刷物があれば、それだけで時間を見つけて来院してくれる可能性が高まります。
このとき渡す印刷物は、これも保健所によって見解は分かれますが、僕は広告に該当しないと考えています。院内に自らの意思で入ってもられた方ですので、3番の「一般人が認知できる状態」には当てはまらないからです。
こういった飛び込みに限らず、印刷物を渡す機会というのは意外とあります。院内に設置しておくだけでも効果あるし、紹介カードと一緒に渡したっていい。とにかく、広告制限というある意味ハンデがあるわけですから、そのハンデがない場面はできるだけ有効に使ってくださいね。
※追記:このセクションの内容も今後治療院の広告ガイドラインができれば変わる可能性があります
追伸:保健所の対応について
今回の記事でお話したようなことは必ず保健所との兼ね合いが出てきます。あなたも知っているとおり、接骨院、鍼灸院、マッサージ院などの広告の監督指導はそれぞれ管轄の保健所が担っています。
僕自身、これまでに全国の保健所に電話で問い合わせしてきました。そこで感じたのは、見解に差があることと、法律を理解していないということ。本当にさまざまな見解がありますし、中には明らかに法律と合ってないものもあります。
なので、今回この記事に書いたことがそのままあなたの地域でも通用するかどうかはわかりません。
大阪の接骨院の事例
大阪市中央区で接骨院をされている先生の院内に自費治療の案内チラシを掲載していました。院内のことなのにどこから漏れたのか、保健所から注意を受けました。
その連絡をこの先生から受けたんで、僕が代理で大阪市の保健所に電話で問い合わせ。そこで院内なら「認知性」を満たしていないから広告ではないのでは?と伝えたんですが、院内でもダメなものはダメの一点張り。
ようは医療広告ガイドラインに書かれている広告の定義がそもそもわかっていないんですね。納得いかないので粘って上司に代わってもらったところ、あっさりOKが出ました。ややこしいヤツと思われたのか、はたまた広告の定義を理解されていたからなのかわかりませんが、あっさりOK。
同じ保健所でも判断する人が違えば結果が違うんですね
京都の接骨院の事例
これもクライアントの代理人として、京都の山城北保健所に問い合わせをしたときの話。そのクライアントが接骨院のガラス戸に「捻挫」の文字を入れてはダメと指導されました。
これはよくある例です。まぁ、捻挫って書いちゃダメですよね。でもこの先生はなんでウチだけ? もっと派手にいろいろ書いている院が周りにたくさんいるのに! ということで僕に相談されました。んで、僕は仕方なく代理で連絡。
僕が保健所の担当者に、「捻挫」は柔道整復師が接骨院で行う業務を案内しているだけで「誘因性」がない。捻挫が治るとも、どこよりも捻挫治療が得意ですとも書いていない。これのどこに誘因性があるのか?という趣旨の訴えをしました。
若干苦しい言い分で申し訳なくなったんですが、大きく筋は外してないとも思います。ようは誘因性があるということを話してくれればよかっただけなんです。
でも向うの担当者の言い分は「捻挫」はダメとだけ。広告の定義がどうなっているのか、誘因性とはなにか、なんてのはどうでもいいんですね、調べようともしない。とにかくダメとしか言わない。で、おとなしく引き下がりました。
ということで、地域差や担当者によって解釈は変わるし、法律を理解しているかどうかも差があります。
あ、あと途中に出てきた医療広告ガイドラインですが、これの対象として、柔整師やあはき師は入っていません。あくまで医師の広告に関する判断です。なので、いくら医療広告ガイドラインでは広告の定義がこう書いてある!と叫んだところで、「それ柔整師関係ないから」と言われればおしまいということです。実際に厚労省の医政局医事課の人にそう言われたこともあります。そこもややこしい話にはなりますが、そうなっていますのでご理解を。
最後にチラシのテンプレートについて
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