鍼灸院経営の今後は暗いのか?

私は治療院コンサルタントとして独立した当初から、終始一貫して「これから有望な資格は鍼灸だ」と言い続けています。しかし当事者達の考えは少し違っているらしく「鍼灸だけで食っていくのは大変だ」と、これまで多くの鍼灸師の口からこのセリフを聞かされました。

この記事を読んでいただいているあなたも鍼灸師は儲からない資格だ! と定義しているかもしれません。

私はこういった鍼灸師の意識を変えたいと思っています。鍼灸師は決して食えない資格ではありません。そこでこの記事では、鍼灸院が不利な点と有利な点についてまとめました。

鍼灸院の現状は暗いのか?

1.鍼灸院を他の競合店を比べてみると

私は自社が開催するセミナーなどを通じて、年間約200名の治療家とお会いします。またそれらとは別に塾やコミュニティも運営し、そちらにも2017年の時点で合わせて100名以上の治療家が参加してくださっています。

そういった経験から感じているのが、鍼灸院は他の施術院と比べると新規の患者さんを集めにくいという事実。これが鍼灸院を経営する際の最大の壁となり、多くの鍼灸師を苦しめています。

集患に苦労する理由は、認知度や信頼度、そして法律などがあげられます。たとえば直接の競合となる業種と鍼灸院を比較してみるとこんな違いがあります。

医療機関(病院など)

あなたもご存じのように日本の医療制度はとても充実していて、信頼度・認知度ともに非常に高い。そして原則として保険が効くので費用も安い。多くの患者さんは、基本的になにか体の不調があれば、真っ先に治療のための候補として医療機関をあげます。

整骨院

2017年10月時点においてグーグルトレンドで検索数を比較した場合、「整骨院」と「鍼灸院」では、整骨院が圧倒的に(3倍近く)多く検索されています。そういった意味においては、認知度は整骨院のほうが高いと予想されます。(※グーグルトレンドとは、どういった単語が検索されているかを調べるツールです)

信頼度を予想するのは難しいのでほぼ同じとします。しかし受領委任制度を利用した保険が原則として医師の同意書なしに扱えるので、費用面では病院に近いポジションに立てています。正当な運営がされているか否かは別にして、保険を使うには医師の同意書が必要な鍼灸よりも有利です。また、整骨院は保険が効くところという認知は、鍼灸の保険に関するものよりも広く知られています。この保険の認知度に関しても整骨院のほうが上です。

整体院

整骨院と同じように、2017年10月時点においてグーグルトレンドで検索数を比較した場合、「鍼灸」と「整体」であれば「整体」の検索数が倍近く多いという結果がでます。これが「鍼灸院」と「整体院」を比較した場合は、わずかに鍼灸院のほうが多い。ですから認知度からいうとほぼ同じかやや不利に位置します。

信頼度の優劣はちょっとつけがたいです。鍼灸師側から考えれば、「なんで国家資格者と民間資格者で信頼度が同じなんだ!」と異論があるかもしれません。しかし一般の方で国家資格と民間資格の違いを理解している割合というのは、現時点ではそれほど多くありません。そういった背景もあって、この両者の信頼度に大した違いはないと予想されます。

両者において決定的に違うのは広告制限の有無です。鍼灸院は、あはき法の7条に定められている通り、広告に関して厳しい制限を受けます。しかし整体院に関しては、景品表示法や医師法などの制限を受けるとはいえ、現実問題としてほぼ野放し状態です。ここの差は新規患者さんを集める際に大きな影響を及ぼします。言うまでもなく整体院側が有利です。

一般の方の感覚からして、値段すら表示されていない鍼灸院のチラシや看板と、値段も経歴も特徴や違いも、そして患者さんの声までも掲載されている整体院のチラシや看板、どちらに興味が湧きやすいかは明白です。

リラクゼーションサロン(民間資格のマッサージっぽい施術院)

ここで取りあげるのは、国家資格のマッサージ院ではなく、民間資格のリラクゼーションサロンなどです。この業界で従事する人にとっては、国家資格のあん摩マッサージ指圧師と、民間資格のリラクゼーションの違いは簡単に説明できます。でも一般の方にとってこの両者の違いを知っている方はまだまだ少数派。ですので、法的にはマッサージ院ではありませんが、一般の感覚に合わせて敢えてここではマッサージという単語を使います。

認知度においては、「マッサージ」と「鍼灸」を比較すると「マッサージ」が10倍近く多く検索されています。ただし「マッサージ院」と「鍼灸院」を比較するとこれが逆転し、「鍼灸院」が4倍多く検索されています。なので、認知度を計るのは難しいです。(感覚的にはマッサージの認知度のほうが高いと思っていますが)

差がつくポイントは価格などを含めた気軽さにあるのではと個人的に考えています。

2017年現在、東京や大阪などの街を歩くと、マッサージ店をいたるところに見つけることができます。最近は全国チェーン展開をするような大手も参入し、価格競争も起こっている状態です。そういった競争環境にあるがゆえに、生き残るための各社の企業努力は目覚ましいものがあります。

1時間2980円といったような激安価格。入りやすい店内。顧客ニーズに合わせたコンセプト。資金力を使った立地や宣伝。これらを駆使し、ちょっとした肩こりや腰痛などの方が気軽に「疲れがたまったしマッサージでも受けよう」と思ってもらえる市民権を獲得しました。その集客力は鍼灸院を圧倒しているといっていいでしょう。

そしてここで述べているマッサージ店は民間資格の施術院を指しますから、整体院などと同じように、あはき法の広告制限を受けません。その点でも集客力においては鍼灸院より有利な立場に立てます。

このように、鍼灸院と競合する施術院などを比較してみると、どうしても鍼灸院の不利な点が目立ちます

 

2.鍼灸のイメージは悪い?

1年間でどれだけの人が鍼灸治療を受けたかの割合を、鍼灸受療率といいます。これに関する調査を探すといくつかの文献が見つかります。それぞれ数字は微妙に違ってはいますが、年間の鍼灸受療率はおおむね7%前後という結果になっているようです。同じような調査で整骨院は15%ほどと報告されているものもありますので、やはり鍼灸治療を受ける人は少ないといえるのかもしれません。

では、この受療率の低さの原因はどこにあるのでしょうか? 少し古いデータになってしまいますが、医道の日本第751号(平成18年5月号)にこんな調査結果が掲載されています。

その調査において、鍼灸治療を受けたいか? との質問に対し、48.6%の方が「受けるつもりはない」と回答しています。そしてこの方たちにその理由を聞いたところ、得られた回答結果が以下です。※複数回答

  • 他の医療で十分・・・40・3%
  • 健康に自信がある・・・22・3%
  • 治療が痛そう(熱そう)・・・20・2%
  • 治療費が高そう・・・15・1%
  • 何にきくかわからない・・・13・5%
  • 効果を信じない・・・13・5%
  • 治療環境が非衛生的と思う・・・5・4%
  • 治療を受ける時間がない・・・4・3%
  • イメージが古くさい・・・3・2%
  • その他・・・5・2%
  • 不明・・・3・2%

引用・参考文献 医道の日本第751号(平成18年5月号)

他の柔整や整体などの治療院にもあてはまることもありますが、鍼灸に対するマイナスのイメージを少なからずもっているのは確かなようです。痛そう、高そう、よくからない、衛生面の問題、こういったイメージが邪魔することで、鍼灸の受療率はなかなか伸びていない状態にあるといえます。

引用させてもらった文献には出ていきていませんが、その他にも肌の露出なども要因のひとつとしてあるのではないかと個人的に考えています。鍼灸治療は基本的に肌を露出させて行います。そうするとどうしても心理的な抵抗が高くなる。特に男性施術者一人などの鍼灸院にとっては、少なからず影響が出るのではないでしょうか。

これらのことから一般の方が鍼灸治療に対する抱くイメージは、マイナスのものが少なくなく、それらが受療率の低さに影響していると予想されます。

 

3.鍼灸師はめちゃくちゃ多い

平成26年度衛生行政報告例によると、

■資格者数
・はり師・・・108537人
・きゅう師・・・106642人

■施術所数
・鍼灸院・・・25445院
・鍼灸マッサージ院・・・37682院

となっています。比較のために同じ年度の柔道整復師は、資格者数63873人、施術所数45572院です。鍼灸院のほうが多いのは一目瞭然。最近は柔整師が増えすぎて大変だと治療院業界では騒いでいますが、鍼灸師のほうがはるかに多いのです。

このように施術者と施術所が柔整より多いにもかかわらず、受療率は柔整より低い。これが鍼灸の置かれている現状です。

 

4.「金儲け=悪」と脳内変換する鍼灸師の存在

私の元クライアントで、とても頑張っておられる鍼灸師の先生がいます。その先生は、私のコンサルを受ける前は月の売り上げが40万ほどでした。しかしその2年後には一人で月商150万を売り上げるまでになりました。

その先生が順調に売り上げを伸ばしていくと、仲間の鍼灸師から「金儲けのために治療家やっているのか?」 といった意味合いの嫌味をたびたび言われるようになったそうです。

「金儲け=悪」という発想しかできない治療家はいたるところに棲息しています。もちろんちゃんとした統計はありませんが、なぜか鍼灸師にそういった類の人が多い。そしてそういった人たちは、儲かっている治療家を見つけるとネチネチと攻撃してくるのです。

ちょっと儲かりだすと、「治せないから何回もリピートするんだ。ウチは1回で治っちゃうからリピートしなくて全然儲からない」とかなんとか言いだす。値上げでもしようものなら「いつからお前は金の亡者になったんだ?」なんて言われてしまう。

私からすれば、ちゃんと鍼灸治療を行い、その対価としてお金をもらってなにが悪いねん! と思ってしまいます。そしてごちゃごちゃ言いたいヤツに言わせておけばいい。と、一笑に付します。

しかし真面目な先生にとってはそう簡単に心の整理ができない場合があります。これがまったくの赤の他人ならまだしも、ときには真っ先に応援してくれるはずの家族からそういった批判が出てくることだってあるからなおさらです。

そういった周りの言動に影響され、心にブレーキを掛けてしまった状態は、鍼灸院経営に大きな影響を及ぼします。もちろんたいていは悪いほうに影響する。

こんな感じに鍼灸師の置かれている状況は暗いです。この章で述べたように、他と比べて患者さんが集めにくい。マイナスなイメージを持たれている。受ける人が少ないのに鍼灸師は多い。ちょっと儲かりだすと周りが全力で邪魔してくる。

ここで終わってしまうと、「ほらやっぱり鍼灸はダメじゃないか」となるかもしれません。でももちろんこれで終わりではありません。次の章では、鍼灸の明るい未来についてお伝えしていきます。

 

鍼灸院の未来は明るい

1.鍼は鍼師にしかできない

鍼は鍼師にしかできません。厳密にいうと医師もできますが、医師で自ら率先して鍼治療をしている人はおそらくかなり少数派なので、ここでは無視します。

鍼は鍼師にしかできない? そんなん当たり前やろ。なに言うとんねん! と、あなたは思うかもしれません。でも実はそんなに当たり前なことではないんですね。たとえばマッサージを例にとってみます。

あなたが鍼灸師であればご存じのように、あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)の第1条にはこう書かれています。

医師以外の者で、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。

このようにマッサージを業として行うには、あん摩マッサージ指圧師免許をもっていないとできません。と法律に明記されています。しかし実際はどうでしょうか?

マッサージではなく、あくまでリラクゼーションである。という形をとって、街中のいたるところにマッサージ屋さんが存在します。施術を受けているお客さんは、マッサージを受けているという認識を持っています。その店が国家資格者の運営するマッサージ院か、それとも民間資格者が運営するリラクゼーションサロンかなんて、ほとんどの人は気にもしません。

これらのリラクゼーションサロン(エステサロンなども)は、普通に考えれば法的に問題があるのでは? と思う先生も多いかと思います。でも現在のところそれほど厳しく規制されている様子はありません。

規制されるどころか、総務省が制定する日本標準産業分類の中に、リラクゼーション業もエステティック業もしっかり入っています。総務省と厚労省で管轄は違いますが、国は今の状況を半分認めているといってもいい状態だともいえるのです。

もちろん、国家資格者でなければ療養費の申請はできませんし、なかには国家資格者でないと体を触ってほしくないという患者さんもいるでしょう。しかし、ここまで緩くなってしまうと、「マッサージなんて資格がなくても誰でもできる」という認識になってしまいました。むしろ広告制限などのことを考えれば、むしろ無資格者のほうが好都合な面すらあります。

つまりマッサージ師であることのメリットは大きくないのです。

接骨院はどうでしょうか? 接骨院で行う柔道整復は柔整師でないとできません。ですから保険診療を中心とした接骨院であれば、柔整師という資格は大いに役立ちます。

しかし近年、保険だけでは接骨院の経営は厳しくなってきました。不正をせず本当にまっとうな療養費の支給申請をしたとすれば、接骨院経営は簡単ではない時代です。

そういった背景から自費治療を導入する接骨院は今後も多くなっていくでしょう。現に私が主宰する「加藤会」と「集客塾」に所属する柔整師のほとんどが、保険治療よりも自費治療の売り上げのほうが多いです。ほぼ自費という先生も4割ぐらい存在します。

先に書いたように、保険治療であれば柔道整復師という資格が、大いなる武器になります。しかしこれが自費治療となれば、資格はむしろ邪魔になることだってあります。

なぜなら接骨院で行う自費治療と、整体院やマッサージ屋さんで行う自費施術、この両者の違いはあまりわからないからです。となると、広告制限のない民間資格者は有利です。仮に法的要件を整えて新たに整体院などを作ったとしても、それは同じ条件になっただけで有利になったわけではありません。

つまり今後伸びていくであろう自費治療の分野において、柔道整復師という資格のメリットも大きくないのです。

あはき法や柔道整復師法によって、マッサージ師や柔道整復師の業務は守られているように見えます。しかし実際は、リラクゼーションマッサージや整体にその業務をおびやかされています。

しかし鍼灸だけは、この章の冒頭で述べたように鍼灸師にしかできません。

マッサージ師という資格があるのに、隙間をついてリラクゼーションマッサージがここまで繁栄しているひとつの理由は、マッサージの定義にあります。

あはき法にはマッサージはマッサージ師と医師しかできないと明記されていますが、その肝心のマッサージとはなんぞや? という定義までは書かれていません。厚労省も通達などで定義らしいものを一応出してはいますが、ただ出しただけの状態です。だから現状は「私のやっていることはマッサージではなく単なるリラクゼーションです」と言われれば、それを規制するのは容易ではないのです。

でも鍼は道具を使いますので、そういった曖昧さは少なくなります。鍼師の資格を持っていないものが、ブスっと異物を体に刺せばそれだけで問題になるからです。そういった意味で、鍼師というのはむやみに業務範囲を侵される不安が他の治療院よりも少ないのです。これは大きなアドバンデージになります。

2.大規模チェーン展開しにくい

かつて治療院といえば、個人が地元密着院として経営するケースがほとんどでした。接骨院を地元に数院持っている先生はそれなりに存在しましたが、全国展開するような院はほとんどありませんでした。

しかし、2017年の段階で見ると、大規模展開する大手と言われるようなところも出てきています。増え始めた当初はリラクゼーションマッサージなどの店が中心でしたが、最近はストレッチや整体と称した店も増えてきています。この流れは今後も続いていくと私は予想しています。

これらの店は今のところ、多くがリラクゼーションマッサージか整体など、民間資格で可能な業種です。理由はスタッフの確保が容易だからです。

整体やリラクゼーションマッサージであれば、ズブの素人を雇用し整体師を名乗らせても法的にただちに責任を問われることはありません。ようは誰でも希望すればなれるわけですから、安い賃金でかつ大量に雇用することが可能です。

しかし、これが鍼灸院であれば話は別です。いくら資格を持っている人が多いとはいえ、そう簡単に大量雇用できるものではありません。賃金も相対的に無資格者よりも高くなりますので、資格者を揃えて大規模化するのは簡単ではないのです。

そういった理由で、今後もリラクゼーションマッサージのように全国に何十店舗も展開するような鍼灸院グループはそう多くは出てこないのではないかと予想しています。

3.適応症が多く論文やエビデンスも豊富

鍼灸の適応症は非常に広範囲に及びます。しかもそれらに対する論文も多く発表されていて、エビデンスの面でも柔整や整体などと比べれば充実しています。これは非常に大きな武器になります。

たとえば接骨院を例に出すと、保険が効くのは骨折、脱臼、打撲及び捻挫などです。もちろん柔道整復を自費で行うのであれば、慢性症状なども診ることはできますが、やはり筋骨格系のトラブルが基本になり、鍼灸にくらべると適応症の範囲は狭いと私は考えています。論文などを調べても、柔道整復に関するものは鍼灸に比べると圧倒的に少ないです。

整体の分野もこれと同じです。そもそも整体とはなにか? という明確な定義は私の知る限りありません。●●式整体といったような個別の理論などは存在するようですが、整体を一つの手技療法として体系立てた理論は見当たりません。

日本でも施術者が多いカイロプラクティックやオステオパシーなどは、整体とは違って系統立てた理論が存在するようです。しかし先に書いたように、今の日本では、誰でもそれらの施術者を名乗っても法的な問題がないのが現状です。

適応症が多く、そしてその根拠となるものも多い。そして国家資格。この立ち位置は、西洋医学に変わる選択肢(併用も含めて)として鍼灸の存在感がより増していく材料になると私は考えています。

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