治療院にキャッシュレス決済は要るのか。僕の答えは「導入しない理由が見当たらない」です。手数料は売上の2〜3%ほどかかりますが、現金しか使えないことで逃している患者さんのほうが、金額としてはずっと大きいからです。とくに回数券やコースを売っている院は、支払いのほとんどがカードになります。
この記事は、2021年に書いた「導入すべきか」と「おすすめの決済会社」の2本を1本にまとめ直し、手数料や回数券の条件を2026年10月時点の各社公式ページで取り直したものです。必要性、手数料の考え方、回数券をカードで売れる条件、主要5社の比較、一人院の選び方の順で書きます。
治療院にキャッシュレス決済は必要?
結論から言うと、必要です。僕が今治療院をやっているなら、開業初日から入れます。理由は3つあります。
理由1:世の中の支払いの6割がもう現金ではない
経済産業省が2026年3月31日に公表した数字では、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%(162.7兆円)でした。内訳はクレジットカードが82.7%、コード決済が10.2%、電子マネーが3.7%、デビットカードが3.4%です。コンビニやスーパーで財布を出さない人が、治療院に来たときだけ現金を用意するわけではないんですね。
理由2:「カード使えますか」の次に「じゃあいいわ」が来る
予約の電話やLINEで「カードは使えますか」「PayPayは使えますか」と聞かれたことのある先生は多いと思います。使えませんと答えたら、「じゃあいいわ」で終わった経験もあるかもしれません。一人そういう人がいれば、聞かずに離れていった人はその何倍もいると考えたほうが自然です。
それと、給料日前です。治療院を経営している先生は給与所得者ではないので、給料日前に財布が寂しい感覚は薄いかもしれません。でも世の中の大半は給与所得者で、月末の財布はだいたい薄い。計画どおり通いたいけれど今週は現金がない、カードなら行ける、という患者さんは確実にいます。
理由3:回数券やコースは、ほぼカードで買われる
これがいちばん大きい理由です。10回の回数券を5万円前後で売るとして、その現金を財布に入れて来院する人がどれだけいるか。ほとんどいません。次回でいいですよと言った瞬間に、買う決意は薄れていきます。その場で決済できる手段があるかどうかで、回数券の売れ方は変わります。
僕が主宰する加藤会の先生に聞くと、「回数券の支払いはほとんどカード」という答えがめちゃくちゃ多いです。回数券の売り方そのものは整骨院の回数券の売り方|買わされた感を残さない提案の順番と設計に書いたので、ここでは決済の話に絞りますね。
ちなみに僕個人は完全にキャッシュレス派で、現金しか使えない店は、よっぽど行きたい店でなければ選択肢から外します。僕ほど極端な人はまだ少数派だと思いますが、こういう人は徐々に増えています。
キャッシュレス決済の手数料は何%?高いと感じたときの考え方
対面のクレジットカード決済で2.2〜3.25%、QRコード決済で1.6〜3.24%、電子マネーで2.95〜3.25%というのが、2026年10月時点の主要5社の範囲です(各社の正確な数字は下の比較表)。
高いと感じる先生のために、一度計算しておきます。月商100万円で、支払いの6割がキャッシュレス、手数料を3%とすると、月の手数料は1万8千円です。年間で22万円ほど。この金額を「取られている」と見るか、「現金だけでは来なかった患者さんの分」と見るかで、答えは変わります。回数券1本の売上が5万円なら、月に1本余分に売れた時点で手数料の大半は戻ってきます。
一つだけ、やってはいけないことがあります。カード払いの患者さんにだけ手数料分を上乗せすることです。JCBの加盟店規約(2026年4月1日改定版)には、現金払いの人と異なる金額を請求するなど、カード会員に不利となる差別的な取り扱いをしないこと、と書かれています(第11条第2項)。他のブランドも同じ考え方です。手数料は料金に織り込むもので、会計のときに足すものではないんですね。
手数料の安さだけで決済会社を選ぶのも、おすすめしません。入金のサイクル、端末がAndroidで使えるか、そして回数券の決済ができるかのほうが、一人院の運営には効いてきます。
デメリットはある?入金の遅れ・端末代・利用停止
デメリットも正直に書いておきます。
- 手数料がかかる(前の章のとおり)
- 入金が後になる。翌日入金の会社もあれば、月3回や月1回の会社もある
- 端末代がかかることがある。無料貸与の会社と、数千円から2万円台で買う会社がある
- 覚えることが増える。会計の操作、返金の操作、売上の突き合わせ
もう一つ、見落とされがちなのが、カード決済が突然止まることです。僕のクライアントでも、決済会社から連絡が来て取引の証拠を求められた先生、利用停止になった先生が何人もいます。多くは回数券やコースの決済が規約の条件から外れていたケースです。止まると、その日から現金しか受け取れなくなる。対策は次の章と、「2社持ち」の章で書きます。

回数券はクレジットカードで売れる?決済会社の規約の線
売れます。ただし、どの決済会社でも、いくらでも、というわけではありません。ここがキャッシュレス決済でいちばん引っかかりやすいところです。
なぜ回数券に制限があるのか
カード決済は、商品やサービスを受け取った分の代金を払う仕組みとして作られています。回数券やコースは、先にお金をもらって後からサービスを提供する「前払い」です。院が途中で閉まったら、カード会社が返金の矢面に立つ。だから制限がかかります。
JCBの加盟店規約では、回数券その他の有価証券の売買にカードを使うことを原則禁じ(第11条第7項)、商品やサービスの提供前に代金を受け取る前払いサービスは、カード会社の事前承認が要るとしています(第12条第2項)。各決済会社が回数券に条件をつけているのは、この種のルールを踏まえたものです。
2026年10月時点の各社の条件
| 決済会社 | 回数券・コースの前払い決済 |
|---|---|
| Square | 可(条件つき)。整体院などの施術は、5万円(税込)以下なら提供期間1年以内、5万円を超えるなら提供期間2か月以内。エステ・美容医療に当たる施術は、5万円超で1か月以内 |
| Airペイ | 可(条件つき)。決済から提供までが1年以内で、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に当たらない商品・サービス。金額の上限は2022年11月に撤廃 |
| STORES決済 | 不可。回数券・回数チケット・コース料金など、1回の取引で複数回サービスが受けられる商材の決済には使えない |
| 楽天ペイ(実店舗決済) | 公式ページに明記を見つけられず。契約前に加盟店窓口で確認する |
| PayPay(直接契約) | 公式ページに明記を見つけられず。契約前に確認する |
Squareの条件は、2021年に書いたときから変わっていません。変わったのはAirペイで、2022年7月に前払いの決済が解禁され、同年11月に金額の上限がなくなりました。提供期間が1年以内なら使えます。回数券をカードで売りたい一人院にとって、2026年の実務ではこの違いが大きいです。

設計で条件に合わせる
10回券を5万8千円、有効期限1年で売りたい、という先生は多いと思います。この設計だとSquareでは5万円を超えるので提供期間2か月以内が条件になり、実務的には使えません。Airペイなら1年以内なので使えます。
逆に、回数券を5万円(税込)以下、有効期限6か月以内に設計しておくと、SquareでもAirペイでも条件に収まります。有効期限を6か月以内にすると資金決済法の前払式支払手段の章が適用されなくなる、という法律側の線とも一致します。この線引きは整骨院の回数券の売り方の「法律の線」の章に書いたので、そちらを読んでください。
痛みや不調の改善を目的とする施術は、特定商取引法の「特定継続的役務」に入っていません。ただし、骨盤ダイエットや小顔のような美容目的のコースは、エステに当たると判断される可能性があります。その場合はSquareの条件が厳しくなり(5万円超は1か月以内)、Airペイでは特定継続的役務に当たると使えません。美容系のメニューがある院は、申し込みのときに決済会社へ正直に伝えておくほうが、後で止まるより安全です。
条件に収まらない高額コースを売りたいとき
5万円を大きく超えるコースや、1年以上使える回数券をカードで売りたい場合は、治療院の回数券に対応している業界特化の決済会社を探すことになります。手数料は3.2%から5%台と、普段使いの会社より高めです。2021年の記事ではここで弊社が代理店をしている会社を紹介していましたが、普段の決済まで手数料の高い会社に寄せる必要はありません。普段は安い会社、高額コースだけ対応できる会社、と分けるのが現実的です。
どの決済会社を選ぶ?主要5社の比較(2026年10月時点)
一人治療院で候補になる5社を、2026年10月14日に各社の公式ページで確認した条件で並べます。手数料やキャンペーンはよく変わるので、契約前に公式ページで確かめてください。
| 項目 | Square | Airペイ | STORES決済 | 楽天ペイ(実店舗) | PayPay(直接契約) |
|---|---|---|---|---|---|
| クレジットカード | 2.5%(年間キャッシュレス決済額3,000万円未満・主要ブランド)。それ以外は3.25%〜 | 3.24% | 月額0円プラン:Visa・Mastercard 2.48%。月額3,300円プラン:1.98%(JCB等は2.38%) | ライトプラン 2.48%(月額0円)。スタンダード 2.20%(月額2,200円・2年継続) | 端末プランで2.20%〜(条件あり) |
| QRコード決済 | 3.25%(PayPay・d払い・楽天ペイ・au PAY等) | 2.95%+税(PayPay・d払い・au PAY・楽天ペイ等) | 3.24% | 楽天ペイ 2.254%+税(ライト)、PayPay 3.24%+税、au PAY・d払い 2.95%+税 | 1.98%(月額0円)。ライトプラン加入で1.60%(月額1,980円) |
| 電子マネー | 交通系・iD・QUICPay 3.25%。楽天Edy・WAON・nanacoは非対応 | iD・QUICPay 3.24%。交通系・Edy 2.95%+税 | 3.24% | Edy・交通系・nanaco・WAON 2.95%+税。iD・QUICPay 3.24% | 端末プランで2.95%〜 |
| 初期費用 | リーダー4,980円 | カードリーダー無償貸与 | 月額0円プランは端末27,720円。月額3,300円プラン(年間契約)は1台無料 | カードリーダー代(公式ページで要確認) | QRコードのみなら0円。端末プランは端末0円 |
| 月額費用 | 0円 | 0円 | 0円または3,300円 | 0円または2,200円 | 0円または1,980円 |
| 入金 | みずほ・三井住友は翌営業日。その他は毎週金曜。振込手数料無料 | みずほ・三菱UFJ・三井住友は月6回、その他は月3回。振込手数料無料(ゆうちょ不可) | 手動入金なら最短翌々日(10万円未満は200円)。自動入金は月末締め翌月20日・無料 | 楽天銀行なら翌日・無料。他行は1回300円+税 | (未確認) |
| 端末 | iPhone・iPad・Android | iPad・iPhoneのみ。Android非対応 | 決済端末単体で完結。POSアプリはiPad・iPhone | iPhone・iPad・Android | 専用端末 |
| 回数券 | 可(5万円以下は1年以内、5万円超は2か月以内) | 可(1年以内・特定継続的役務でない) | 不可 | 要確認 | 要確認 |
細かい数字より、一人院にとって効く違いは次の4つです。
- 回数券を売るなら、SquareかAirペイ。STORESは不可
- Androidしか持っていないなら、Airペイは選べない
- 入金を早くしたいなら、Square(みずほ・三井住友)か楽天ペイ(楽天銀行)
- 手数料を1%台にしたいなら、STORESの月額3,300円プランかPayPayのQRだけの契約
一人治療院はどう選ぶ?僕ならこう組む
僕が今、一人で治療院をやるならこう組みます。
回数券やコースを売る院は、メインをAirペイにします。クレジットカード、PayPayなどのQRコード決済、交通系電子マネーが1つのカードリーダーで揃い、回数券も1年以内なら決済できるからです。弱点は、iPadかiPhoneが要ることと、審査が他社よりしっかりしていることです。僕のクライアントでも「審査が通らなかった」という報告は、Airペイがいちばん多いです。運用後に取引の確認の電話が来ることもあります。裏を返せば、それだけちゃんと見ているということでもあります。
Androidを使っている院、とにかく早く始めたい院は、Squareです。申し込みから使えるまでが早く、治療院でSquareの審査に落ちたという話を僕は聞いたことがありません。回数券は5万円以下・1年以内の設計にしておけば問題ありません。みずほ銀行か三井住友銀行の口座があれば翌営業日に入金されます。
回数券を売らず、手数料を最優先にする院は、STORESの月額3,300円プランか、QRコード決済だけをPayPayと直接契約する形が候補です。ただしSTORESは回数券に使えないので、後で回数券を始めたくなったときに2社目が要ります。
楽天ペイは、楽天銀行の口座があれば毎日入金され、ライトプランの手数料も2.48%と悪くありません。回数券の扱いが公式ページで確認できなかったので、売りたい先生は契約前に窓口で聞いてください。
僕のクライアントで実際に多いのは、SquareとAirペイです。どちらも2021年から条件が良くなっているので、この2社から選んでおけば大きな失敗はないと思います。

決済会社は2社持ちがおすすめ
最後に、おすすめの使い方です。決済会社は1社に絞らず、2社と契約しておく。これは2021年から変わっていません。
理由は2つです。1つは、回数券とそれ以外で、使える会社と手数料が違うから。普段の決済は手数料の安い会社で受けて、回数券や高額コースだけ条件に合う会社で決済する。2つの端末を置くのは少し面倒ですが、手数料と規約の両方に対応できます。
もう1つは、利用停止への備えです。前に書いたように、カード決済は突然止まることがあります。1社しかなければ、その日から現金のみになります。回数券を売った直後に止まると、患者さんへの説明にも困ります。もう1社あれば、翌日からそちらで受けられます。
2社目は、普段使っていなくても契約だけしておけば、月額0円の会社なら費用はかかりません。保険みたいなものだと思っておいてください。
整骨院の一部負担金もキャッシュレスで受け取れる?
整骨院の先生から、保険施術の一部負担金をカードやPayPayで受け取っていいのか、と聞かれることがあります。
医療機関については、厚生労働省が2023年9月29日の事務連絡「医療機関等における一部負担金のキャッシュレス支払いについて」で、クレジットカードや汎用性のある電子マネーによる支払いを差し支えないとしています。柔道整復の施術所を名指しした文書は、僕が調べた範囲では見つけられませんでした。現場では一部負担金をキャッシュレスで受けている整骨院が普通にありますし、禁じる決まりも見当たりませんが、気になる先生は加入している団体や保険者に一度聞いておくと安心です。
もっとも、保険だけで整骨院を続ける道はもうありません。一部負担金の数百円をカードで受けるかどうかより、自費のメニューをどう組むかのほうがずっと大きな話です。そこは整骨院の経営が厳しい本当の理由|2026年7月改定で保険はもう限界に書いています。
導入の手順と、入れたあとにやること
申し込みはどの会社もWebで完結します。店舗の実態がわかる資料(ホームページや外観・内観の写真)、本人確認書類、入金口座を用意しておけば、申し込み自体は10〜20分です。審査はSquareが早く、Airペイは3日程度、STORESは最短4営業日が目安です(各社公式ページ、2026年10月時点)。
入れたあとにやることが3つあります。
- ホームページ、Googleビジネスプロフィール、予約ページに「クレジットカード・PayPay可」と書く。使えることを知らなければ、患者さんは聞かずに離れていきます
- 受付に対応ブランドのステッカーを貼る。決済会社から届きます
- 会計のときに「お支払いはどうされますか」と聞く。カードを出していいのかわからず現金で払っている人がいます
キャッシュレス決済は、入れて終わりではなく、使えると知ってもらって初めて売上に効きます。客単価の話は整体院の客単価の相場は?調査データで見る現実と上げ方5手順、回数券を導入するかどうかの判断は治療院で回数券を導入するメリット・デメリットにまとめています。
この記事の要点
- 治療院にキャッシュレス決済は必要。2025年の国内のキャッシュレス比率は58.0%で、回数券やコースはほぼカードで買われる
- 手数料は対面カードで2.2〜3.25%。月商100万円なら月1万8千円ほど。カード客への上乗せは加盟店規約で禁止
- 回数券は売れるが条件がある。Squareは5万円以下なら1年以内、5万円超は2か月以内。Airペイは1年以内で特定継続的役務でないこと。STORESは不可
- 回数券は5万円以下・有効期限6か月以内に設計すると、規約にも資金決済法にも収まる
- 一人院は、回数券を売るならAirペイ、Androidや早さ重視ならSquare。メイン1社+回数券用または予備1社の2社持ちで、利用停止に備える
キャッシュレス決済は売上を受け取る手段であって、売上を作る手段ではありません。新規の集客からリピート、回数券やコースの設計まで、一人治療院が週休2日で月商100万円に届くための全体の仕組みは、無料の動画セミナーで解説しています。決済を整えたら、次はこちらを見てください。
⇒ 週休2日で月商100万 楽しく治療院を繁盛させる方法(無料動画セミナー)
出典(2026年10月14日確認)
- 経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2026年3月31日)https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260331006/20260331006.html
- Square「料金プラン」https://squareup.com/jp/ja/pricing /「回数券・継続的役務:Squareにおけるカード決済のご利用制限」https://squareup.com/help/jp/ja/article/6029 /「電子マネー決済」https://squareup.com/jp/ja/payments/e-money
- Airペイ「料金・必要機器」https://airregi.jp/payment/cost/ /FAQ「決済手数料・振込手数料」https://faq.airpayment.jp/hc/ja/articles/218985588 /FAQ「入金(振込)サイクル」https://faq.airpayment.jp/hc/ja/articles/219379377 /FAQ「商品、サービス提供前決済のご利用条件変更と加盟店規約改定について」(2022年11月1日)https://faq.airpayment.jp/hc/ja/articles/11870825583385
- STORES決済「手数料率・初期費用・決済端末費用」https://stores.fun/payments/pricing /「一部業種向け特別料率」https://stores.fun/pricing/specialrate
- 楽天ペイ(実店舗決済)「各種ブランドの決済手数料」https://information.pay.rakuten.net/hc/ja/articles/6759277828495 /「入金サイクルについて」https://information.pay.rakuten.net/hc/ja/articles/8135897374095
- PayPay「店舗向け導入案内」https://paypay.ne.jp/store/
- JCB加盟店規約(2026年4月1日改定版)第11条第2項・第7項、第12条第2項 https://www.jcb.co.jp/kiyaku/pdf/kameiten0705_05.pdf
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡「医療機関等における一部負担金のキャッシュレス支払いについて」(2023年9月29日)
