治療院にマジメに通ってくれた患者さんが、改善しなかったときの対処法についてお伝えします。
患者さんに治療計画を説明するのは基本中の基本です。何回通えよって伝えろっちゅうことですね。これがないとリピート率はやっぱり悪くなるし、そもそも治療計画がない院は、もはや治療院とは呼べへんやろと僕は思っています。
これには異論反論がある方もいると思います。実際にこれまで何人もの治療家からこれについてはいろいろと言われてきました
- いい治療をすれば勝手にリピートするから必要ない
- 1回で治っちゃうからいらない
ってなことを言われてきました。これについては今回の記事のテーマからは外れるのでここでは論じません。とにかく、僕は治療院において、治療計画を患者さんに説明することは基本かつ、重要なことだと考えています
通院指導をして治らなかったらどうしよう
ではここからは通院指導をするのは重要なことだという前提で続けます。
実は重要だととわかっていても、なかなかできない先生が多いんですね。理由はいくつもあると思うんですけども、そのうちの大きな大きなひとつは「治らんかったらどうしよう」ってヤツだと思います。
だってあなたが「10回通えよー」と、患者さんに指示して、患者さんはそのとおりにマジメに10回通いました。でも全然治りませんでした。ってなったら、めちゃくちゃきまずいじゃないですか。
僕もね、はるか昔ですけども整体院やってましたから気持ちはめちゃくちゃわかるんですよ。
僕ね、治療技術は5流以下なんですよ。ちょっと教育したチンパンジーのほうがうまいんちゃうか?っていうぐらいのレベルだったんで、もうね、全然治りやがらんのですよ。
そうなったら、焦りますよね。「先生、いつになったら治りますか?」とか聞かれるわけですよ。こんなん聞かれたら、「ん?」とか言っちゃってましたよ。いつになったら治りますか?って聞かれてるのに、その答えが「ん?」ですよ。なんやねん、その答えっちゅう話です
でも僕からしたら、こっちが聞きたいわ!と思ってたぐらいなんで、なんも答えられないんですよ。昔のこととはいえ我ながらひどいですね
僕ほどでないにしても、こういった自信がない状態だとなかなか自信を持って治療計画を告げられないんですよ。
で、ひどい先生になると「施術に満足したら勝手にまた来るやろ。自分の意思で来てるんやったらこっちの責任も薄くなるやろうから、こっちからなにも言わず患者さんの自由意思に任せることにしよう」ってなってしまって何も言わない、何も説明しないって選択をしちゃうんですね。
これ、最悪です。一番やったらアカンやつだと僕は考えています
治らなかった時のためのに保険を掛ける
じゃあ、どうすんねん!治らんかったら怒られるやんけ!どないすんねん!って思った方は、先に保険を掛けてみてください
治療計画の説明に限らずす、べてのことに通じることなんですけども、なにかよろしくないことが起こってからそこからリカバリーしようとしちゃダメなんですよ。もう、それ手遅れ。
10回通えと指示しました
↓
患者さんはマジメに通いました
↓
でも治りませんでした。さぁ、どうしよう。
これじゃあダメなんです。
よくここからうまく逆転する魔法のひとことなんかを教えろ!って言ってくる人がいるんですが、そんなもんないです。ここから、なんかうまいこと言って、丸く収めようとしても遅いんです。先に予防せにゃいかんのですよ。
火事になって家が全焼してから、さぁどうしよう・・・って言ってるのと同じ。
でも火災保険に入っていればなんとかなるじゃないですか。それと同じで保険を掛けるんですよ。保険という表現は、抵抗を感じる先生もいるかもしれないけど、保険みたいなもんです。
どうやって保険を掛けるのかというと、これからいう5つのポイントを押さえてください
- 治療計画を臨床経験を元に伝える
- 改善の定義を決める、もしくは調整する
- 医療の不確実性を伝える
- 治療家の意気込みや熱意を伝える
- 患者さんから「はい」をもらう 同意の言葉をもらうってことですね
これをやってもえると、保険も掛けられるし、実はリピート率もあがります。
リピート率と患者さんからの信頼がアップする説明事例
では、どんな感じに伝えるのか実際の会話例を、先程お伝えした5つのポイントを入れて、患者さんの名前が加藤さんということにしてやってみますね。
じゃ、ここからです
ってな感じですね
この事例のように説明した後、患者さんの口から「はい。頑張ります。先生、お願いします」という言葉を引き出すことができれば、その患者さんは高確率でリピート通院してくれるようになります
5つのポイント解説
今の事例、5つのポイントが全部入ってたのわかりますかね?
おさらいすると
1.治療計画を臨床経験を元に伝える
以下の部分がこれにあたります
加藤さんのような体の状態や、痛みの度合いだと、週に2回のペースで10回通ってもらえればだいたい約7割の方が、
1回、2回で体ってすぐ変化しないんですね。僕の施術だと6回ぐらいで体の変化ってだいたいわかります。そらぐらい受けてもらえると、そのまま続けて10回目ぐらいでしっかり改善するのか、それとも、もう少し回数が掛かって15回ぐらいなるのか、もしくはこのまま続けても、どこまで改善するかちょっと予想できないないとか、このあたりの、指針というか判断をお伝えすることができます
逆を言うと、6回は最低、通ってもらわないと、その判断はつかないんです。なのでまずは6回を目安に皆さん、通院してもらっています。6回目で判断して、そのあとどうしていくかを、みなさん話し合って決めてもらってるんですよ
だいたい10回やでということを伝えつつ、判断には6回は最低必要やで。みんなそうしてもらってるんやで。ということを伝えてます。
ここはもっと具体的に他の患者さんの例をあげてもOKです。たとえば、ちょうどう先月加藤さんと同じような状態の人が来た。その人がちょうど8回通院してくれていて、こんな状態になっている。ってな感じです。
具体的に直近の患者さんで似たような人を例に出すことで伝わりやすくなる効果があります
2.改善の定義を決める、もしくは調整する
これは以下の部分です
加藤さんは、今、なにをするのも足の痛みが気になってはるじゃないですか?
さっき買い物に行くのも大変とおっしゃっていたと思うんですけども、10回通ってもらったら数時間の買い物ぐらいであれば、歩いて駅に行って、電車乗って、ほんで百貨店をぶらぶらして、ほんでランチして、こんな感じですかね、いつも? たぶんこれで数時間だと思います。
これぐらいではあれば、特に気にせずに楽しめるようになれる可能性が高いです
途中、足が痛いから動けなくなるとか、椅子に座って休憩せなあかんくなるとか、そういったのはなく普通に出歩くぐくらいにはなれる可能性が高いです。
問診時に聞きだした患者さんが叶えたいことを中心にして、こういうことができるようになるんですよ、ここまでは持っていきますね。という直近のゴール設定をします。
ダッシュで走れるようになれるではなく、数時間の買い物ぐらいは大丈夫な体にしますね。という説明をしているうんですね。
もちろんここは患者さんが得たい結果であることが理想です。買い物なんぞいけなくていいという人に「買い物行けるようになりますよ!」と言っても全然響きません。山登りができるように回復させたい人にとっても同じです。
ここはしっかり問診で患者さんが得たいと思っていることを話してもらい、それを中心に患者さんとすり合わせや確認をすることが大事です
3.医療の不確実性を伝える
ここはあんまり話したかがらない先生が多いんですけども、僕はするべきだと考えています。特に今回のテーマでもある「治らなかったらどうしよう」と感じてしまう人は必ず入れるべきです
事例でいうと以下の部分です
でも、残念ながらそこまで改善できなかった例っていうのも、僕の院ではこれまでに約3割います。
痛みはマシになったけどもまだけっこう残ってるとか、階段の上り下りだけはやっぱり辛いみたいな感じに、普通の日常生活とまでは改善できなったみたいな例ですね。それがだいたい2~3割あるんですよ。中にはほとんど治らなかったなんてことも、少ないですけどもやっぱりあります。
なので、必ず治るとは言えないです。実際の臨床結果として、僕の院では今のところ7割ぐらいというのが実際の数字です
先に「治らん人もおるで」って宣言しちゃうんですね。
仮にこの説明をしたことで「そんなんやったらええわ」と治療そのものを断ってくる人がいたとしても、それはそれでええやろと僕は考えています。売上げはそのぶん下がりますが、あとからも揉めるよりもよっぽどいいと思います。
そして一応頭に入れておいてほしいことがあって、こういった不確実性の話を患者さんにすると一定数からの反応は悪いです。言い訳や自信のなさそうなイメージを持つからです。こういった人が一定数いるということは覚えておいてください
4.治療家の意気込みや熱意を伝える
これは別になくていいっちゃあいいんですが、人間関係という観点でいうとあったほうがいいです。こうった自分の想いを伝えることで人してのつながりができるからです
例の部分でいうと以下です
さっきもお伝えした通り、必ず治るをは言えないです。でも、僕としては加藤さんが元の生活に戻れるように、買い物も、旅行も、なんにも気にせず楽しめるようになってもらいたいので、当たりまえですけども、手を抜かずやれることは全部、全力でやります。これは約束します
言うのが恥ずかしいとか、なにかポリシーがあってそういったことは言いたくないというのでなければあなたの想いも伝えてみてください
5.患者さんから「はい」をもらう
今回の事例を話したあと「はい。頑張ります。先生、お願いします」がもらえれば理想です
この「はい」はあなたが説明したことに同意しましたという意味になるんですね。ハンコをもらったわけではないので強い法的効果があるとかではないですが、一貫性の原理(法則)といった心理的な効果はあります
改善しないこともありますという説明をしたうえで「はい。お願いします」と答えているわけですから、仮に治らないことがあったとしても、それを含めて同意の上で通院をしていることになります、あくまで心理的には。患者さんからすると、治らなかったとしても自己責任だという感情をもってくれやすくなるんですね
めっちゃセコイやり方のように感じるかもしれないですけども、僕はあんまりそうは思いません。医療の不確実性は事実だし、事前に説明すべきことだからです。
患者さんに正しい情報を提供することが大事
どうでしたか?5つのポイントをおさえた説明については伝わりましたか?
わかりやすいように「保険を掛ける」という表現を使いました。そして今回解説した説明は、実際に改善しなかったときの保険になります。でもこういった説明をする本当の目的は、患者さんに正しい情報を提供するという意味からきています。
「絶対に治ります」と患者さんに説明するのは、普通に考えれば問題ある発言ですよね。だって絶対なんてことはあり得ないので、それは完全に嘘だからです。つまり間違った情報をもとに患者さんミスリードしてしまう危険があります。
だから、いい情報も悪い情報も、あなたが持っている情報はすべて包み隠さず患者さんに提供すべきだと僕は考えています。そしてその上で最終的には患者さんに選んでもらえばいいと思っています。
そしてそれが結果的に、多くの患者さんとの信頼関係の構築になるし、頑張って通院して改善させようという決意につながります。もちろんそれであなたの治療院の売上げだって伸びます。つまり誰も損することがない、理想的な状態に近づくことができるんです。
この考え方に共感した方は、是非今回の記事を参考にして患者さんとの信頼関係をさらに深めていってください。
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