治療院のマーケティングってなにをすればいいのか? というか、そもそもマーケティングってなにを指すの?といった質問をよく受けます。
マーケティングといってもその定義の正解が僕もよくわかりません。申し訳ない。ひとことでは答えるには範囲が広すぎるからですね。企業の活動全部を指すこともできますし、もっと小さな範囲の活動を指す場合もありますから。
でもそれで終わるとダメなんで、この記事では一般的な答えではなく、僕の考える治療院のマーケティングについてお答えします。あなたの院の経営に生きてくることです。マーケティング力を高めて治療院経営をよくしていきたい先生は最後まで読んでください。
治療院のマーケティング=売り込みではない
最初にお伝えしたいこと、それはマーケティング=売り込みではないということ。
患者さんに売り込んだりするのは苦手で・・・と、そんな理由でマーケティングを遠ざける先生がいますが、それは違います。セールスはマーケティングの一部ともいえます。でも不必要なセールスを極力なくすためにこそ、マーケティングがあるんです。
ドラッガーは「マーケティングの理想は販売を不要にすることである」なんてこと言っています。販売(セールス)そのものをなくすことはできませんので、少し注釈をつけると「余計なセールスはいらない」と理解するといいかも。
つまり、ちゃんとしたマーケティングができれば、「買ってください! 買ってください!」といった、いわゆる不必要なセールスがいらなくなるという意味。
治療院でいうと、ライバル院と比較して高単価であっても、立地が悪く通いにく場所にあったとしても、「是非あなたの治療が受けたい!」と患者さんがお願いしてくるような状態。治療が終わるや否や「次はいつ来ればいいですか?」と患者さん自ら聞いてくる状態。
こんな状態になれば素敵ですよね? マーケティングはそれを可能にするものです。決して怪しいものでもなければ、患者さんに粗悪な商品を売りつけるためのものでもありません。
治療院のマーケティングとはなにか?
では治療院のマーケティングとはいったいになにを指すのでしょうか? 僕はこう考えています。
1)必要とされる商品を作る
2)その商品の価値を説明する
3)その商品を買えるようにする
この3つです。
1)必要とされる商品を作る
意外に思う先生もいるかもしれませんが、商品を作ることも立派なマーケティングです。だから治療技術セミナーに通うのも、治療の勉強をするのも「施術(治療)という名の商品」を作っていることになりますから、マーケティングのひとつなんです。
でもだからといって施術技術だけ磨いていても、それだけでは残念ながらマーケティング的には不十分です。
もちろん他を大きく圧倒するだけの腕があれば、それだけで繁盛院になれる可能性は高くなると思います。でも残念ながらほとんどはそんな腕はないです。だから施術の腕だけで勝負するのはちょっと難易度が高いです。
とはいえ、治療院で販売されているのはいわゆる「既製品」ではありません。その点は他の小売りなどと比べた場合、差別化が楽です。
ソニーのカメラはどこで買ってもソニーのカメラだし、キューピーのマヨネーズは、コンビニで買おうがスーパーで買おうが同じキューピーのマヨネーズ。
それに対して治療院で売っている施術は、既製品のようにまったく同じということはありません。あなたが施術しているという時点で既に差別化(区別化)ができているとも言えます。
だから実は必要とされる商品は治療院は作りやすいんです。あとは商品力を総合的に高めていくことが大事。
技術も商品ですが、商品の機能的な価値でしかありません。商品にはその他に感情的価値や自己表現的価値などもさまざまな価値が含まれているんですね。感情的価値は簡単にいうと好き嫌い。自己表現的価値は「その商品を買っている自分が好き」といった状態。
たとえば院内のインテリアが好き。窓からの景色がいい。先生がイメメン。これらは感情的価値です。テレビに出ている有名な先生に施術してもらっている私って幸せだわ。特別な存在って感じ。これは自己表現的価値。
機能・感情・自己表現これら3つの価値に明確な区別や定義はありませんが、施術そのもの以外にもさまざまな要素であなたの商品は作られているということは覚えておいてください。
これらを知った上で、じゃあ見込み患者さんに必要な商品ってどんなもの? を考え、作っていくことが大事です。
こちらの記事にも商品力について少し書いています。参考にしてください
▼一人治療院成功の秘訣【4】商品力を高める
2)その商品の説明をする
多くの治療院でマーケティング的に足らない点は2と3です。ではその2の「商品の価値説明」について。
たとえば「鍼灸院なんだから、鍼とか灸で治療するに決まってる!」という説明ではダメです。ここまでひどくないにしても、これに近い治療院は意外に多くあります。
そもそも治療を買ってくれる側の患者さんは、整骨院であれ、鍼灸院であれ、整体院であれ、十分な予備知識がありません。仮にあったとしても、それを提供する本人が「こうです!」と説明してくれないと不安に感じるものです。
考えてみてください。不安に感じる商品を買う気になりますか?
「たぶん一般的にはこんな感じなんだろうけど、行ってみないとわからないし・・・」
そんな状態では自分の大事な体を預けられません。自分の大事なお金と時間を使って治療を受けようとも思いませんよね。特に自費治療院になると値段だって安くないわけですから。
だからあなたが売っている商品の説明が大切です。そして、その上でその商品がもたらす価値や未来の説明をすることが重要です。
具体的には以下を明らかにしましょう
- 誰が施術するのか
- どんな施術を行うのか
- 院内環境やロケーション
- どんな状態や症状に対応しているのか
- どんな成果が得られるのか
もちろんこれら以外にもしっかりとした理念やコンセプトを説明できればなおいいです。これらがわかって
「こんな先生がこんな考えで施術してくれるんだ。私の症状も見てくれるみたいだし、成果も得られそう。どんな雰囲気かもわかるし安心。よし、一度みてもらおう!」という行動を起こしてくれます。
あなたの治療院で提供できることや考え方に納得や共感すれば、来院のハードルはぐっと下がります。その後の通院もよりスムーズ。まさしく前のセクションで書いたように、不必要なセールスを行う必要がない状態にもっていくことができます。
3)その商品を買えるようにする
素晴らしい商品を作り、そしてその商品の説明をホームページに完璧にホームページなどに掲載したとしても、その商品を購入できるようにしなければ買うことはできません。
たとえばそこに治療院があるということを認知されなければいつまで経っても集客はできません。治療院の新規集客がうまくいかない原因の大きな要因がこの認知不足です。認知さえしてもらえれば集客できるというわけではありませんが、認知すらしてもらえなければ、比較対象にすら乗れないので選ばれるはずがないんですね。
だからここはお金や労力をかけてでも、あなたの商品を買いたいという見込み患者さんに知ってもらわなくちゃあならない。これは看板さえ出しておけばOKというような簡単なことではありません。
また、「いかにスムーズに買うことができるのか?」という点も大切。買う際に感じる障害を、わざわざ買い手である患者さんが自己解決してくれないからです。
少し考えてみてください。予約は電話のみの治療院と、電話と24時間受け付けのオンライン予約システムの両方を用意している治療院、どちらのほうがより新規の取りこぼしが少なくなるでしょうか?普通に考えれば後者ですよね。あなたの治療院に予約を入れたい!と思った瞬間に予約を入れることができるからです。これが商品を買える状態という意味。
ホームページなどにたどりつきやすくするためにSEO対策やMEO対策をするのだって同じ。いくら自分にぴったりの治療院があったとして、検索してもなかなか見つけられなければその院に予約することはできません。
その他にも必要な情報、予約方法、料金、地図などがホームページのどこに書いてあるかよくわからないというのも買うための障害になります。こうしたスムーズな購入を阻む障害はたくさんあります。
こうした障害の解消ができていない治療院は多く、本来なら来てもらえる患者さんを取りこぼしているケースをよく見受けられます。これもマーケティング的には大きなマイナスです。
治療院のマーケティングとはつなぐこと
冒頭に書いたようにマーケティングといっても考え方はさまざまです。ただ、僕としては決して売り込みではないことをあなたに知ってもらいたいと思っています。
治療家ってマーケティングという言葉に嫌悪感を示す人が多いんです。「腕が良ければ患者さんは来る。宣伝するなんて腕が悪いと自ら叫んでいるようなものだ」なんてことを言う先生も未だにいます。
うん。全然違います。
誰かの役に立つサービスやモノ(施術)を持っているあなたと、そのサービス(施術)やモノを必要としている患者さん、この両者を正しくスムーズにつなぐモノがマーケティングです。
巷にはそれってどうなの?と思うようなひどい誇大広告などがあふれています。購買欲を煽って不必要なものまで買わせてしまうのもマーケティングっちゃあマーケティングなんだけど、あんなもんはやりたい人にやらせておけばいいんです。
それが嫌ならあなたはそうしたことをしなければいいだけ。
マーケティングって決して汚いものでも、あなたの治療院の品位を下げるものでもありません。ましてや誇大広告で患者を騙すことでもない。
両者を正しくつなぐマーケティングなら、どちらにとってもメリットのほうが大きいはずです。僕はそういったマーケティングを実践してほしいと思っています。