治療院のキャンセルポリシーの作り方|文例3つと決める5項目

キャンセルポリシーを作ろうと思ったものの、何を決めればいいのか、キャンセル料は取るべきなのか、どう書けば感じが悪くならないのか。作りかけて止まっている先生は多いです。

この記事では、キャンセルポリシーを作る側の実務を書きます。決める項目、キャンセル料の法律の線、そのまま使える文例、キャンセルされたときの運用です。なぜ事前に伝えておくべきなのか、どのタイミングで伝えるのかは無断キャンセルや遅刻を減らす方法に書いたので、そちらとセットで読んでください。

先に僕の立場を書いておくと、キャンセル料を取るかどうかに正解はないです。取りたいなら取ればいいし、そこまでしたくないなら取らなくていいです。ただ、ルールを決めて先に伝えることだけは、取る取らないに関係なくやっておいたほうがいいです。伝えていないから、患者さんが勝手に判断するんですね。

治療院のキャンセルポリシーで決めるのは5項目

キャンセルポリシーは、次の5つを決めれば形になります。

治療院のキャンセルポリシーで決める5項目(期限・キャンセル料・連絡手段・遅刻・例外)を示した図解

項目 決めること 目安
1. 期限 いつまでの連絡なら通常のキャンセルか 前日の◯時まで
2. キャンセル料 期限を過ぎたら取るか、いくらか 取らない/当日は施術料の全額、など
3. 連絡手段 何で連絡してもらうか 電話・LINE
4. 遅刻 何分の遅刻でどう扱うか 15分以上はキャンセル扱い、または施術時間の短縮
5. 例外 やむを得ない事情のときどうするか 柔軟に対応する、と明記

1. 期限は「空いた枠を埋められるか」で決める

前日の午前中まで、前日の18時まで、当日の朝まで。いろいろありますが、基準は一つで、連絡をもらってから、その枠に別の患者さんを入れられる時間があるかです。

前日の午前中に連絡があれば、LINEで「明日の15時が空きました」と流すことができます。当日の朝だと、それは難しい。あなたの院で空き枠をどう埋めているかに合わせて決めてください。埋める手段がない院は、期限を早くしても意味が薄いので、前日18時くらいで十分です。

2. キャンセル料は「取らない」か「実害に見合う額」の二択

キャンセル料は、取らなくてもいいです。ただ、取るなら実害に見合う額にしてください。遅刻300円、当日キャンセル500円のような少額の罰金は、やめておいたほうがいいです。

理由は2つあります。一つは、割に合わないからです。ドタキャンされた枠には、別の患者さんが入れたかもしれません。そのときに限って、前日に予約を断っていたりします。そこで500円もらっても、腹が立つだけです。

もう一つは、500円払えばキャンセルしていい、という意識が生まれるからです。ウリ・ニーズィーという経済学者の本に、イスラエルの保育園の話が出てきます。お迎えに遅れる保護者が多いので少額の罰金を課したところ、遅れる人が逆に増えたそうです。罰金がないときは「申し訳ない」という気持ちがブレーキになっていたのに、罰金ができた瞬間に「払えばいい」に変わったんですね。

実際に、少額の罰金で「少し減った気がする」という先生もいました。でも、逆に増えるリスクを抱えたやり方なので、僕は反対です。やるなら、その枠の施術料をそのままいただく形にします。

3. 連絡手段は院が受け取れるものに絞る

「メールで送ったのに」「留守電に入れたのに」を防ぐために、連絡手段は指定しておきます。電話とLINEの2つにしている院が多いです。LINE公式アカウントを使っている院なら、LINEを第一にしておくと、患者さんも連絡しやすいです。LINEの使い方は治療院のリピートをLINEを使って1.5倍にする方法に書きました。

4. 遅刻は「次の患者さんを待たせない」を軸にする

遅刻の扱いで決めるのは、施術時間を短くするのか、キャンセル扱いにするのかです。どちらにしても、遅刻した人のために次の患者さんを待たせないを軸にしてください。

遅刻した患者さんの施術が長引いて、時間どおりに来た患者さんが待たされる。これが続くと、ルーズな患者さんは居心地がよくて残り、時間を守る患者さんが嫌気をさして去っていきます。僕が息子を連れていった予約制の皮膚科がまさにそれで、順番どおりに行った僕が1時間以上待たされ、遅れてきた人が先に診てもらっていました。奥さんに話したら「あそこは番号どおりに行ったらアカンで。みんな知ってるから遅れて来るねん」と言われました。二度と行っていません。

5. 例外は必ず書く

「やむを得ない事情と当院が判断した場合は柔軟に対応します」の一文は、必ず入れてください。患者さんの安心のためでもあり、あなた自身の裁量を残すためでもあります。体調不良や身内の急な事情でキャンセルした人に、機械的にキャンセル料を請求する先生はいないと思います。それを最初から書いておけば、ポリシーが厳しく見えすぎません。

キャンセル料には法律の線がある

キャンセル料を取ると決めた先生は、ここだけ知っておいてください。僕は法律の専門家ではないので、条文で確認できた範囲で書きます。

消費者契約法の第9条第1項第1号は、契約の解除に伴う損害賠償や違約金の定めについて、同種の契約の解除で事業者に生じる「平均的な損害の額」を超える部分は無効、と定めています。治療院の予約キャンセルでいえば、その枠で受け取れたはずの施術料が損害の目安になります。当日キャンセルに施術料の全額、というポリシーはこの範囲の考え方ですが、施術料の2倍を請求するような設定は、超えた部分が無効になり得ます。

また、同条第2項では、患者さんから説明を求められたときは、キャンセル料の算定根拠の概要を説明するよう努めることとされています。「予約枠を確保していたため、その枠の施術料をいただいています」と答えられるようにしておけば十分です。

もう一つ、現実の話をしておきます。無断キャンセルをした患者さんは、そのまま連絡が取れなくなることが多いです。キャンセル料を請求しても回収できない。だから、キャンセル料は「取り立てる」ものというより、次に来院したときにいただく運用にしている院が多いです。取れなくても、ルールがあること自体がキャンセルの抑止になっているので、それでいいと僕は考えています。

そのまま使えるキャンセルポリシーの文例3つ

文例を3つ用意しました。数字と時間は、あなたの院に合わせて変えてください。

文例1:ホームページ・LINE・院内掲示用(全文)

いつも予約のお時間どおりにご来院くださり、ありがとうございます。皆さまが時間を守ってくださっているおかげで、当院ではお待たせすることなく施術を受けていただけています。これからもその環境を保つために、予約のキャンセルと変更について次のようにお願いしています。

・キャンセル・変更のご連絡は、前日の18時までにお願いします
・前日18時以降のキャンセルは、ご予約分の施術料をキャンセル料としていただいています
・ご連絡は、お電話またはLINEでお願いします
・15分以上遅れられた場合は、施術時間を短縮させていただくことがあります
・体調不良やご家族のご事情など、やむを得ない場合は柔軟に対応しますので、まずはご連絡ください

書き出しを「ありがとうございます」から始めているのには理由があります。次の章で書きます。

文例2:予約時に口頭で伝える一言

「キャンセルや変更のときは、前日の18時までにご連絡いただけますか。他の患者さんにその枠をご案内できるので、ご協力お願いします」

理由を付けて、患者さんの口から「はい」をもらうのがコツです。「はい」と言った人はキャンセルしにくくなります。この仕組みは治療院のリピートは問診で「はい」をもらうとうまくいくに書きました。

文例3:前日のリマインド(LINE・メール)用

明日◯時にお待ちしています。ご都合が変わった場合は、本日18時までにこのLINEでお知らせください。

リマインドは、キャンセルポリシーを毎回思い出してもらう場です。長く書かなくていいです。期限と連絡手段だけを入れておきます。

書き出しで損をしているキャンセルポリシー

クライアントのホームページで、こんな書き出しのキャンセルポリシーを見たことがあります。

当院では最近、無断キャンセルや当日キャンセルが多発しております。

ポリシーを書くこと自体はいいんです。問題はこの一文です。これを読んだ人は「みんなキャンセルしてるんやったら、俺もええか」と思うかもしれませんし、「無断キャンセルが多い院って、強引に予約を取らせる怖い院なんちゃうか」と想像する人もいます。院のイメージとして、キャンセルが多い院と、みんなが時間を守る院、どちらがいいかは明らかですよね。

治療院のキャンセルポリシーの書き出しの比較。「多発しております」ではなく「ありがとうございます」から始める理由を示した図解

トイレに「いつもきれいに使ってくださってありがとうございます」と貼ってあるのを見たことがあると思います。「きれいに使え」より効くから、あの書き方が増えたんですね。みんなちゃんとしているのに自分だけ汚す、という状況を人は気持ち悪く感じます。

だから僕なら、「いつも時間どおりに来院してくださってありがとうございます」から始めます。続けて、そのおかげで待ち時間なく施術を受けてもらえていること、これからもそれを続けたいことを伝えて、そのあとにルールを書く。文例1はその形です。テストして数字を取ったわけではないので、僕の考えです。でも、余計な感情を生む書き方を避けるだけでも、デメリットは減ると思っています。

治療院のキャンセルポリシーを添えた前日のリマインドを、患者さんが自宅でスマホで確認している場面

キャンセルされたときの運用

ポリシーを作ったあと、実際にキャンセルが起きたときの動き方も決めておきます。

初回のキャンセルは、その場でひと言だけ伝える。 うやむやにすると、次も同じことが起きます。冒頭で紹介した記事に書いた整骨院の先生は、何度もドタキャンされたあとに注意して、その患者さんは来なくなりました。対応自体は間違っていないと思いますが、最初の1回目に伝えていれば、そこまで行かずに済んだ可能性があります。

体調不良のキャンセルでは、その場で次回の予約を聞かない。 来院できないほどしんどい人に、次いつ来ますかと聞くのは配慮に欠けます。「回復されたらまたご連絡ください」で切って、数日後にこちらからフォローします。そのときは体調をまず聞いて、回復していたら「4日の14時か17時、5日の10時が空いています」と候補を出して選んでもらいます。「いつにしますか」と聞くと、患者さんが候補を考えないといけないので、後回しにされやすいです。1回のキャンセルで気持ちが切れて、なんとなく消えていく患者さんはけっこういます。ここはフォローさえすれば戻ってきてくれる可能性が高いので、放っておかないでください。

キャンセル料は次回来院時にいただく。 前の章で書いたとおりです。連絡が取れなくなった人を追いかけるより、来てくれた人にきちんと説明していただくほうが、関係が続きます。

繰り返す人には、予約の取り方を変える。 2回、3回と続く人には、前日に必ず確認の連絡をする、当日の朝に確認が取れてから枠を確定する、といった扱いにします。それでも続くなら、以後の予約をお断りすることもポリシーに書いておいてよいです。

キャンセルポリシーでやってはいけないこと

・少額の罰金を設定する。「払えばいい」に変わって、逆に増えることがあります
・「無断キャンセルが多発しています」から書き始める。院のイメージを自分で下げています
・例外の一文を入れない。厳しく見えすぎて、予約そのものをためらう人が出ます
・遅刻した人に合わせて、時間どおりの人を待たせる。守る人から去っていきます
・ルールを決めずに、その場その場で対応する。人や日によって基準が変わり、誠実に見えません
・作っただけで伝えない。伝えるタイミングは無断キャンセルや遅刻を減らす方法で

この記事の要点

・キャンセルポリシーで決めるのは5項目。期限・キャンセル料・連絡手段・遅刻・例外
・キャンセル料は取らなくてもいい。取るなら実害に見合う額。少額の罰金は逆効果になり得る
・消費者契約法9条により、平均的な損害を超えるキャンセル料は超えた部分が無効。施術料の範囲内で決める
・文例は「ありがとうございます」から始める。「多発しております」からは始めない
・体調不良のキャンセルでは次回予約を聞かず、数日後にこちらから候補日を出してフォローする
・キャンセル料は次回来院時に。繰り返す人には予約の取り方を変える


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この記事で使った法令と資料の出典

・消費者契約法(平成12年法律第61号)第9条第1項第1号(解除に伴う損害賠償の額の予定等で、平均的な損害の額を超える部分の無効)、第9条第2項(算定根拠の概要を説明する努力義務)。e-Gov法令検索で条文を確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061
・ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト『その問題、経済学で解決できます。』(東洋経済新報社)に紹介されているイスラエルの保育園の実験
・キャンセル料の相場については、2026年9月にGoogle検索「治療院 キャンセルポリシー」の上位に表示された治療院のポリシーページを目視で確認した。当日・無断キャンセルに施術料の全額を設定している院が多かった

条文の解釈は僕の理解の範囲で書いています。自院のキャンセル料の設定が法律にどう当たるかは、専門家に確認してください。

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