整骨院の廃業率は?公的データはないが一次資料で見える3つの事実

「整骨院 廃業率」で検索すると、95%が廃業する、5年で半分が消える、といった数字が出てきます。開業を考えている先生も、今まさにしんどい先生も、この数字を見て不安になったと思います。

先に僕の見方を言っておきますね。整骨院の廃業率を示す公的なデータはありません。95%にも、5年で半分にも、たどれる出どころがないです。ただ、廃業率そのものは分からなくても、厚生労働省と信用調査会社の一次資料を並べると、はっきり見えてくることが3つあります。倒産が過去30年で最多になっていること。院の数がほとんど増えていないのに、資格を取る人は毎年3,000人前後いること。つまり、開いた数と同じだけの院が閉じていること。この3つです。

そして、閉じる理由の根っこは、たいてい同じところにあります。保険のみの整骨院で食べていく道は、もう残っていないということです。僕のスタンスは一貫していて、接骨院がこれから法律を守って経営していくなら、自費を柱にするしかないと思っています。制度と療養費の話は整骨院の経営が厳しい本当の理由|2026年7月改定で保険はもう限界で書いたので、この記事は廃業のほうに軸足を置きます。

僕自身、最初に開いた整体院は1年で廃業しています。今は治療院専門のコンサルタントとして、これまで何百院という接骨院・整骨院に関わってきました。廃業した院も、廃業しそうなところから抜け出した院も、両方見てきた立場から書きますね。

整骨院の廃業率に、公的なデータはありません

まず、ここをはっきりさせておきます。厚生労働省が公表しているのは、施術所の数と、働いている柔道整復師の数です。何か所が新しく開いて、何か所が閉じたか、という数字は公表されていません。だから「整骨院の廃業率は◯%」と書いてあるものは、どれも誰かの推計か、出どころの分からない数字です。

「95%が廃業」という数字も、探しましたが根拠にたどりつけませんでした。「5年以内に半分」も同じです。どこかの記事が別の記事を引用して、そのうち事実のように見えるようになった数字だと思います。

参考になる数字を一つ挙げるなら、中小企業庁の「中小企業白書」2023年版に、起業後5年の企業生存率が80.7%という記述があります。ただしこれは業種を問わない全体の数字で、しかも白書自身が「実際の生存率よりも高めに算出されている可能性がある」と注意書きをつけています。療術業だけの生存率は、公的には出ていません。

なので、数字が知りたくて検索した先生には申し訳ないんですが、正確な廃業率は「不明」です。それでも、一次資料を並べると見えてくることがあります。ここからはそれを書きますね。

事実1:整骨院を含む「療術業」の倒産は、過去30年で最多です

東京商工リサーチが、日本標準産業分類の「療術業」(接骨院・鍼灸院・マッサージ店・整体などを含む)の倒産を集計しています。対象は負債1,000万円以上の法的整理です。

期間 療術業の倒産件数
2018年(暦年) 93件(前年68件。当時の過去10年で最多)
2019年度 98件
2025年度 108件(前年度比14.8%増。1996年度以降の30年間で最多)
2026年1〜7月 68件(前年同期比7.9%増。同期間で過去15年間の最多)

2025年度の108件のうち、原因の84.2%が販売不振です。負債は108件すべてが1億円未満、資本金1,000万円未満が96.2%。要するに、小さな院が、患者さんが減って、静かに倒れています。2026年に入ってからは人手不足による倒産も出てきています(1〜7月で7件。前年同期はゼロ)。

整骨院の廃業率の参考になる療術業の倒産件数。2025年度108件で過去30年間の最多、2026年1〜7月は68件。負債1,000万円未満で閉じた院は統計に載らない

ただ、この数字はそのまま受け取らないでください。倒産の統計に載るのは、負債1,000万円以上で法的な手続きを取った院だけです。一人でやっている整骨院が、借金を残さずに店をたたんだ場合、この統計には1件も載りません。たぶん、それが閉院の大半やと思います。倒産108件は氷山の一角で、その下に統計に載らない閉院がある。そう読むのが正しいと思います。

事実2:院の数は2年で8か所しか増えていません。資格を取る人は毎年3,000人前後います

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

厚生労働省の衛生行政報告例(2年ごとの調査)から、柔道整復の施術所数と就業柔道整復師数を抜き出しました。あわせて、厚生労働省が発表している柔道整復師国家試験の合格者数を、同じ2年ごとに足してあります。

期間 施術所の増減 就業柔道整復師の増減 国家試験の合格者(2回分の合計)
2018年末→2020年末 +287か所 +2,769人 7,455人
2020年末→2022年末 +552か所 +1,846人 5,751人
2022年末→2024年末 +8か所 +1,034人 5,581人

(施術所数は2018年50,077か所→2020年50,364→2022年50,916→2024年50,924。就業柔道整復師は73,017人→75,786→77,632→78,666。合格者は第27回4,054人、第28回3,401人、第29回3,011人、第30回2,740人、第31回2,244人、第32回3,337人)

3つの列を見比べてください。

まず、直近の2年で施術所は8か所しか増えていません。50,916か所が50,924か所になっただけです。増えたのが8か所ということは、新しく開いた院とほぼ同じ数の院が閉じている、ということです。この2年間の開業がゼロやったはずはないので、ここは確実に言えます。廃業率は分からなくても、「開いた数と同じだけ閉じている」は一次資料から言えます。

次に、資格を取った人と、働いている人の差です。2023年と2024年の国家試験で5,581人が柔道整復師になっています。ところが、同じ2年間で働いている柔道整復師は1,034人しか増えていません。差し引きで約4,500人。この2年間だけで、それだけの人数が、この仕事に入ってこなかったか、辞めていったか、どちらかです。そこには開業して閉じた先生も、雇われて辞めた先生も、免許を取って別の仕事に就いた人も、高齢で引退した先生も含まれます。内訳は分かりません。ただ、6年分を足すと、合格者18,787人に対して、働く柔道整復師の増加は5,649人です。資格を取った人の3割ほどしか、業界に残っていない計算になります。

この計算は、僕が厚生労働省の数字を組み合わせたものです。年末時点の就業者数と3月の試験の合格者数を合わせているので、粗い計算です。それでも、傾向を見るには十分だと思います。

整骨院の廃業率を推し量る数字。2年間で国家試験合格者5,581人に対し、働く柔道整復師は1,034人、施術所は8か所しか増えていない

もう一つ、10年の流れも見ておきます。2014年末から2016年末は施術所が2,452か所増えました。2016年末から2018年末は2,053か所。それが2018年以降は数百か所になり、直近は8か所です。開業ラッシュは2018年ごろで終わっています。院を増やし続けてきた業界が、増えなくなった。閉じる数が、開く数に追いついた、と言ったほうが正確かもしれません。

事実3:閉じる理由の根っこは「保険のみでは食べられない」ことです

倒産も閉院も、原因は一つではないです。立地、資金、家庭の事情、体調。いろんなことが重なって、最後に閉じる決断になります。ただ、整骨院に限って言えば、根っこにある構造は共通しています。保険のみの整骨院で食べていく道が、もう残っていないことです。

僕に言われなくても柔整師の先生はみんな分かっていることですが、療養費の対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫で、慢性の肩こりや腰痛は対象外です。そして、急なけがで整骨院に来る人は、そもそも多くありません。急に痛めたら整形外科に行く人のほうが多いですから。柔道整復療養費の総額は、平成26年度の3,825億円から令和4年度の2,747億円まで、8年で約28%減っています。この間に施術所は増えているので、1院あたりの保険の売上はもっと減っています。

2026年7月の療養費改定では、2部位目に80%の逓減が新設され、直近1年で通算8か月以上かつ9部位以上の患者さんは償還払いへ変更する事例に加わりました。制度は多部位と長期を締める方向で動いていますし、次の改定でもその流れは続くと思います。改定の中身と数字は整骨院の経営が厳しい本当の理由|2026年7月改定で保険はもう限界にまとめてあるので、そちらを読んでください。

ここで言いたいのは一つだけです。閉じる院の多くは、腕が悪かったわけでも、努力が足りなかったわけでもないです。保険に頼った形のまま、パイが減っていくのを待ってしまった院です。だから僕は、接骨院がこれから法律を守って経営していくなら、自費を柱にするしかないと思っています。「自費を足すかどうか」ではなく、「いつ自費を柱にするか」の話です。

潰れる治療院に共通する7つのこと

制度の話はここまでにして、僕が見てきた側の話をしますね。この仕事を10年以上やっていて、残念ながら潰れてしまう治療院をたくさん見てきました。恥ずかしい話ですが、その中には僕の塾に来てくれた先生も含まれています。責任は感じています。そのうえで、共通していたことを7つ挙げます。数字を取ったわけではなく、僕の経験からの主観です。原因は一つではなく、いくつかが重なって閉じることが多い、という前提で読んでください。

1.立地が悪い

人は多くないのに競合だけが多い、しかもその競合が強い。同じことをやっても、成果は全然違います。その中でもちゃんと経営している院はあるので、誰がやっても潰れるとは言いません。ただ、難易度が上がるのは事実です。

2.関係ないことに力を入れる

月商が数十万円の段階で、必死に税理士を探す。ホームページのブログに、毎日ランチの写真を載せる。やる気はあるのに、方向が違うから結果につながらない。この先生がいちばんもったいないです。正しい知識にたどりつけば、なんとかなる可能性があるからです。

3.自分で考えようとしない

他院のホームページを、当院の特徴や想いの部分までまるごとコピーする。経営が傾いたら、とりあえず安売りを始める。安くするだけなら、誰でも2秒で思いつきます。自分の頭で考えていない院は芯がないので、患者さんに見限られるのも早いです。

4.外部環境のせいにする

天気が悪い、近くに競合ができた、保険の改定があった。どれも自分ではどうしようもないことです。それはそのとおりなんですが、「じゃあどうするか」を考えて動けるかどうかで分かれます。変化を傍観して、飲み込まれるのを待っている院は厳しいです。

5.一発逆転や簡単な方法を追い求める

自分の院がどういう院なのかを言語化する作業は、面倒くさいです。だからそこを飛ばして、誰でも簡単に治せるという技術や、すぐ集客できるという手法にばかり飛びつく。必要な過程を省いた院は、うまくいく時期があっても続かないです。

6.治療院をビジネスと捉えていない

困っている人を助けたくてこの仕事を選んだ。その想いは、僕は好きです。でも家賃は払っていますし、家族を養う収入も要ります。ちゃんと勉強して、ちゃんとした施術をして、それに見合うお金をきちんと受け取る。経営者の側面を無視したままだと、想いがあっても続けられません。

7.経営の能力、あるいは運が足りない

乱暴な言い方になりますが、治療技術が高いことと、経営ができることは別の能力です。雇われなら力を発揮できるのに、自分で経営するとうまくいかない先生はいます。それと、運。立地の話も半分は運です。ここは自分ではどうしようもない部分もある、ということは正直に書いておきます。

整骨院の廃業率に負けないために、夕方の施術室で施術ベッドを丁寧に拭く一人院の院長のイラスト

読み返すと、7つのうち5つは「考えること」に関係しています。立地と運以外は、考えて動けば変えられることばかりです。

廃業率に負けない整骨院がやっていること

逆に、閉じずに残っていく院がやっていることは、そんなに複雑ではないです。僕が見ている範囲で、共通しているのは3つです。

1.保険と自費を分けて数字を見ている

今月の売上のうち、保険がいくらで自費がいくらか。保険の患者さんが何人で、自費の患者さんが何人か。ここを分けて見ていない院は、保険が減っていることに気づくのが遅れます。まずは分けて出すだけでええんです。

2.自費を「足す」のではなく「柱」にしている

保険の患者さんに自費メニューを少し足す、という形だと、保険が減るスピードに追いつきません。自費で通ってもらう患者さんを軸に据えて、保険はその周辺、という形に組み替えていく必要があります。保険中心の院で自費を高単価で提案する話は保険中心の接骨院で自費治療を高単価で売る方法に、一人治療院で安売りしない考え方は1人治療院の経営を成功させる5つの秘訣に書いてあります。

3.価値で選ばれる理由を持っている

価格でも立地でも便利さでもない、うちを選ぶ理由。大手や近隣の院と同じ土俵で戦わない。これは中途半端な治療院は潰れるで10年前に書いたことですが、今も変わっていません。価格も便利さも価値もない中途半端な院から先に消えていきます。

自費を柱にする具体的な手順(保険と自費を分ける、自費メニューを決める、問診と説明を作り直す、など)は、整骨院の経営が厳しい本当の理由|2026年7月改定で保険はもう限界の後半に5つの手順としてまとめてあります。この記事では繰り返さないので、そちらを読んでください。

閉じることは失敗ではない、と言っておきます

最後に、今まさに閉じるかどうか迷っている先生に向けて書きます。

僕は最初に開いた整体院を1年で廃業しました。当時は正しい知識を学ぶことから目をそむけて、惰性でやっていましたから、当然の結果だったと思います。でも、そこで終わりではなかったです。

クライアントにも、保険のみの接骨院を閉じて、整体院として開業し直した先生がいます。その先生は初月から月商100万円を超えました。閉じたから終わりではなく、形を変えて続けた例です。

もちろん、閉じる前にできることはあります。患者さんが少ない時期に何をすべきかは暇な治療院がやるべきことに書きました。ただ、保険のみの形にしがみついて、体力も資金も使い切ってから閉じるのが、いちばんもったいないです。閉じるなら、形を変えるために。続けるなら、自費を柱にするために。どちらにしても、「保険のみのまま待つ」だけは選ばないでください。

この記事の要点

・整骨院の廃業率を示す公的データはない。「95%」「5年で半分」に、たどれる出どころはない

・療術業の倒産は2025年度108件で30年間の最多。ただし負債1,000万円未満で閉じた院は統計に載らない

・施術所は直近2年で8か所しか増えていない。開いた数と同じだけ閉じている

・6年間で18,787人が資格を取り、働く柔道整復師は5,649人しか増えていない

・根っこは、保険のみでは食べられない構造。「いつ自費を柱にするか」の話

・潰れる院の共通点7つのうち、5つは「考えること」で変えられる


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この記事で使った数字の出典

・施術所数・就業柔道整復師数:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表5・表6(各年末現在。2014年から2024年まで2年ごと)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/24/index.html

・国家試験の合格者数:厚生労働省「第27回〜第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」(各年3月)https://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/2026/siken16/about.html ほか各年のページ

・倒産件数:東京商工リサーチ「2018年『マッサージ業、接骨院等』の倒産状況」(2019年1月15日)、「2025年1-6月の『マッサージ業』倒産55件」(2025年7月6日)、「『マッサージ業』の倒産が過去30年で最多の108件」(2026年4月19日)、「『マッサージ業界』の倒産増加 1-7月は過去最多」(2026年8月31日)https://www.tsr-net.co.jp/data/

・企業生存率:中小企業庁「2023年版中小企業白書」第2部第2章第2節 コラム2-2-3の注19 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/chusho/b2_2_2.html

・療養費の推移・2026年7月改定:厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会の配布資料。詳細は整骨院の経営が厳しい本当の理由の出典欄を参照

2年ごとの増減と合格者数の比較、6年間の合計は、上記の数字から僕が計算したものです。就業者数は年末時点、合格者数は各年3月の発表なので、厳密な突き合わせではありません。

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