整体院で物販をやるべきか。やるなら何を、どう売ればいいのか。やったことなければまったくわからずに迷いますよね。
先に結論を言うと、一人整体院なら、物販はやったほうがいいと僕は考えています。施術だけで売上を作ろうとすると、あなたの体と時間が上限になるからです。
もちろん施術以外は売りたくない、という先生は、やらなくて全然OKです。絶対にやらなければならないことではなく、それはそれで一つの経営だからです。この記事は「そういうつもりはないんやけど、何をどう売ればいいか分からへん」という先生に向けて書きます。
順番はこうです。①なぜ物販なのか ②向く院と向かない院 ③売れるものと売れないもの(法律の線) ④何を選ぶか ⑤値付け ⑥押し売りにならない勧め方。
整体院に物販をすすめる理由は3つあります
理由1:施術だけだと、売上の上限があなたの体で決まる
一人院の売上は、客単価×1日の人数×稼働日数です。このうち人数と日数には、体力と時間の天井があります。
たとえば客単価8,000円で、週休2日、1日6人。これで月商100万円くらいです。ここから先を伸ばそうとすると、単価を上げるか、人数を増やすかしかない。人数を増やせば体が削れるし、単価は上げ続けるにも限度があります。このあたりの計算は整体院の客単価の相場は?調査データで見る現実と上げ方5手順で書きました。
物販の売上は、この掛け算の外側にあります。施術の時間を使わずに立つ売上です。だから一人院ほど効きます。
理由2:あなたの院では、腰痛の患者さんに施術しか売っていない
僕は焼肉ならホルモンが好きなんですけど、ホルモンって昔は捨てられていたそうなんですね。食べられるのに、食べずに捨てていた。
これ、あなたの院でも起きていないでしょうか。
腰痛の患者さんが来る。目的は腰の痛みを何とかすることです。あなたは施術をして、その痛みを改善しようとする。この施術があなたの院の売上です。で、ほとんどの院はそこで終わっています。
でも、腰の痛みを何とかするための商品やサービスは、施術だけではないですよね。サプリもあるし、コルセットのような道具もある。腰痛体操やストレッチの指導、食事の指導だって商品になり得ます。しかも、改善したあとも患者さんの情報は残ります。年齢、性別、体の状態、家族構成、下手したら趣味まで分かっている。
つまり、売ろうと思えば売れるものが、院の中にいくつも転がっている。それを施術だけで終わらせているのは、ホルモンを捨てているのと同じやと思うんです。
理由3:対面は、ネットより圧倒的に売りやすい
こう言うと、「俺はメルマガもやってないし、ネットで売るのは無理」という先生がいます。でも、それは逆です。
ネットでものを売るのは、実はめちゃくちゃ大変です。認知してもらうまでが大変やし、文章や動画だけで売らないといけない。メルマガで100人に提案して5人に買ってもらうのは、相当しんどいです。
対面で10人に提案して数人に買ってもらうのは、そこまで大変じゃないです。あなたは毎日、患者さんと直接会っています。その人の体の状態も、生活も、価値観も知っている。信頼関係まである。これはネット販売の人がいくら金を払っても手に入らない条件です。
物販に必要なのは、たった2つのステップです。
1. 自分の顧客層に合った商品を探す
2. その商品が必要な人にすすめる
これだけです。
物販が向く整体院、向かない整体院
とはいえ、全部の院にすすめるわけではないです。向き不向きを先に書いておきます。
向く院
・通院期間が長い患者さんが多い院。慢性の痛みや体のメンテナンスで通う人が中心なら、家でのケアや消耗品が自然につながります
・初回割引で集客していて、施術単価を上げにくい院。単価が取りにくいコンセプトの院ほど、施術以外の売上で補う必要があります
・自分が使って納得できる商品が、すでにある院。ここが一番大事です。あとで書きます
向かない院、まだ早い院
・施術以外は売りたくない先生。これは全然OKです。無理にやると、声のトーンに出て患者さんに伝わります
・稼働率が低くて、新規と問診に課題がある院。物販で売上の穴を埋めようとすると、押し売りになります。順番が逆です
・患者さんの層が「安いものしか買わない」に寄っている院。お金を払う人の3つのタイプについては保険中心の接骨院で自費治療を高単価で売る方法に書きました。物販も同じで、そもそも誰を集めているかで決まります

整体院で売れるもの・売れないもの(法律の線)
ここは先に押さえてください。整体院は国家資格の枠の外にあるので、何でも売れそうに見えますけど、売れないものがあります。根拠は薬機法(医薬品医療機器等法)です。条文は記事の最後に置いておきます。
売れないもの:医薬品
医薬品は、薬局か医薬品販売業の許可を受けた人しか売れません(薬機法24条)。整体院にはその許可がないので、医薬品に分類される湿布や塗り薬は売れないし、陳列もできません。
一方で、医薬部外品や化粧品は、小売りに許可は要りません。同じ「湿布っぽいもの」でも、パッケージの分類が医薬品なのか医薬部外品なのかで扱いが変わります。仕入れる前に必ず表示を確認してください。
届出や許可が要るもの:医療機器
医療機器はクラスで扱いが分かれます。
| 分類 | 売るために必要なこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 高度管理医療機器 | 都道府県知事の許可 | 薬機法39条 |
| 管理医療機器 | 都道府県知事への届出(営業所ごと・事前) | 薬機法39条の3 |
| 一般医療機器 | 許可・届出は不要 | ― |
家庭用の低周波治療器やマッサージ器のなかには、管理医療機器に当たるものが多いです。仕入れ先に「これは医療機器のどの区分か」を必ず聞いて、管理医療機器なら届出を出してから売ってください。届出そのものは、保健所に出す書類仕事です。難しくはないですけど、出さずに売ると法律違反になります。
全部に共通:効果効能を言わない
売っていいものでも、言い方には線があります。医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器について、効能や効果を虚偽または誇大に言うことは、誰であっても禁止です(薬機法66条)。承認を受けていないものの効能を広告するのも禁止(68条)。サプリは食品なので薬機法の直接の対象ではないですけど、「腰痛に効く」と言った瞬間に医薬品的な効能を言ったことになって、同じ問題になります。
原則は一つで、効果効能を言わない。これでほぼ大丈夫です。僕の理解で言い換えの例を出すと、「ダイエットサプリ」はまずいけれど「燃焼サプリ」なら通る。「ダイエットが成功する」はまずいけれど「着たい服が着られるようになる」ならOK。ただ、この線引きはめちゃくちゃ細かくて、僕も全部を把握しているわけではないです。迷ったら言わない、が安全側です。
何を売るか:おすすめ商品は「知らん」です
「おすすめの商品はありますか」とよく聞かれます。正直に言うと、知らんです。
意地悪で言っているのではなくて、あなたの患者さんの層も知らないし、あなた自身の考え方も知らないからです。だからこれは自分で探すしかない。その代わり、探すときの基準を3つ渡します。
基準1:自分が使って、納得していること
一番大事です。自分もスタッフも使ったことがないものを売ろうとしても、言葉に実感が乗りません。患者さんは商品が欲しいというより、「先生がすすめるなら間違いないやろ」で買います。その信頼を使う以上、自分が納得していないものを売ると、施術の信頼まで一緒に削れます。
基準2:ネットで同じものが安く出ていないこと
一般に流通している商品は、あとから患者さんがスマホで調べます。同じものがAmazonで2万円安く出ていたら、「ぼったくられた」と思われます。売上は小さくても、信頼の損失のほうが大きい。一般販売されていない商品か、そうでなければ次の章のように価値を乗せる。どちらかにしてください。
基準3:関係が続くものであること
一回売って終わりの商品より、消耗品や、使い方の指導が付く商品のほうが、施術のリピートにつながります。サプリのような消耗品は、なくなったらまた買いに来る。そのついでに施術も受ける。物販と施術が互いに支え合う形になります。ここは治療院のリピートをLINEを使って1.5倍にする方法でも書いたところです。
全部自分で作らなくていい
もう一つ大事なことを。多くの先生は「売るなら全部1から自分で作らなアカン」と考えがちですけど、そんな必要はないです。人の商品を売ればいい。間に入って手数料をもらう形で十分です。
僕自身、人の講座や商品を紹介したときの紹介料だけで、年に数百万円以上は入ってきています。自分の商品でなくてもいいんですね。
候補としては、サプリ、コルセットやサポーター、枕、インソール、セルフケアの道具、体操やストレッチのプログラム、食事指導。この中から、基準1〜3に合うものを一つ選んでください。最初は一つでいいです。メニューを増やしすぎると分かりにくくなるのは、施術も物販も同じです。
値付けは「価値を乗せる」で決める
ここで、知り合いの治療家さんから受けた相談を一つ。
その先生は、院内で5万円くらいの電気治療機器を売っていました。1台4万円で10台仕入れています。ところが、Amazonで見ると同じものが3万円で出ていた。黙って売ってもいいけど気が引ける、あとで調べられて「ぼったくられた」と思われるのも嫌や、どうしたらええか、という相談です。
Amazonと同じ3万円で売ったら赤字です。かといって5万円で売る理由がない。
答えは、2万円ぶんの価値を乗せることです。
その機械を患者さんが家で使うとして、いつ、体のどこに、どれくらいの強さで、どれくらいの時間当てればいいのか。ここが分かっていない患者さんがほとんどです。使い方を間違えると、よくなるどころか逆に負担がかかることもある。だから、あなたの体の状態を見ながら、こちらで使い方のプログラムを全部組みますよ、施術に来てくれたら毎回それを見直しますよ、と。この指導を乗せて5万円、という売り方です。
見せ方としてはこうなります。
| 項目 | 価値 |
|---|---|
| 機器本体(定価58,000円と仮定) | 58,000円 |
| 施術ごとの使い方指導(回数無制限) | 30,000円相当 |
| 合計 | 88,000円相当 |
| 提供価格 | 50,000円 |
Amazonの3万円の箱と、あなたの5万円は、もう別の商品です。あとは患者さんがその価値を感じてくれるかどうか。
一つだけ注意。価値を乗せたら、そのコストもちゃんと価格に入れてください。毎回の指導には、あなたの時間がかかります。そこを無料で乗せ続けると、ビジネスとして成り立たなくなる。5万円で話を進めましたけど、6万円でも7万円でも構いません。治療家の先生は、このあたりの感覚を飛ばして考えてしまう人が多いので、そこだけは気を付けてください。

この考え方を伸ばすと、施術と物販と指導をひとつのプログラムにまとめて、10万円、20万円のコースにすることもできます。最初から20万円に抵抗があるなら、まず10万円のコースを作ってみる。ちゃんと問診と説明ができていて、商品の設計がしっかりしていれば、意外と売れます。そこは1人治療院の経営を成功させる5つの秘訣で書いた時間単価の話と、そのままつながっています。
押し売りにならない勧め方
物販でいちばん多い悩みは、「押し売りみたいで嫌や」だと思います。ここは僕の定義をはっきりさせておきます。
押し売りは、相手の状況を無視して、こちらの都合だけで売ること。提案は、相手の都合が前提。この2つは別物です。
だから、やることは一つで、相手の状況を知ること。そのうえで、その状況に合った商品だけをすすめる。これで多くの場合、押し売りにはなりません。問診で患者さんの生活と困りごとを聞き出せていれば、「この人にはこれが要る、この人には要らん」が自然に分かれます。詳しくは治療技術に自信が持てずに経営難の先生へに書きました。
それでも押し売りになってしまうなら、それは売り方の問題ではなく、目の前に連れてくる段階でミスマッチが起きています。新規集客の問題なので、物販より先にそっちを直してください。
勧め方の3つの型
・施術に組み込む。施術中に実際に使って、体感してもらってから話す。テーピングやセルフケアの道具はこの型が一番自然です
・試してもらう。コルセットや枕は、数日貸し出してから決めてもらう。買わされた感が消えます
・一人に一品。あれもこれもと並べない。問診で分かったその人の困りごとに、一つだけ合わせて出す
告知はLINEで
院内のPOPも効きますけど、一人院で一番楽なのはLINE公式アカウントです。来院していない患者さんにも届くし、施術中に話す時間を取らなくていい。「こういうものを扱い始めました。気になる方は次回聞いてください」くらいの温度で十分です。詳しいやり方は先ほどのLINEの記事に書いてあります。

物販でやってはいけないこと
最後に、失敗の型を並べておきます。
・在庫を大量に抱える。さっきの先生は10台仕入れていました。最初は1個か2個、なければ取り寄せでいいです
・値引きで売る。物販の値引きは、施術の値引きと同じ効き方をします。価値を乗せる方向で考えてください
・効果効能を口にする。「これで腰痛が取れます」は、法律の話であると同時に、あとで信頼を落とす言葉です
・全員にすすめる。合わない人にすすめた瞬間に、押し売りになります
・施術の代わりにする。物販は施術の外側に立つ売上であって、施術の穴埋めではありません。稼働率と問診が先です
物販は、やり方を間違えなければ、あなたの時間を使わずに売上を足せる、一人院にとって数少ない手段です。まずは自分が納得できる商品を一つ。そこからでいいです。
この記事の要点
・一人整体院なら物販はやったほうがいい。施術以外の売上は、体と時間の上限の外側に立つ
・向くのは、通院が長い患者さんが多い院・単価を上げにくい院・自分が納得できる商品がある院。施術以外は売りたくない先生はやらなくてOK
・医薬品は売れない(薬機法24条)。医療機器は区分によって許可(39条)か届出(39条の3)が要る。効果効能は言わない(66条・68条)
・商品を選ぶ基準は、自分が使って納得・ネットで値崩れしない・関係が続く。人の商品でいい。最初は一つ
・値付けは価値を乗せる。3万円の機械を5万円で売るなら、2万円ぶんの指導を乗せる。そのコストも価格に入れる
・押し売りは相手の状況を無視すること、提案は相手の都合が前提。問診で状況を知って、一人に一品
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物販は、施術の外側に売上を足す手段です。ただ、それが効くのは、どんな人を集めて、どう問診して、どう通ってもらうかという土台ができている院だけです。土台がないまま物を並べても、押し売りになるだけで終わります。
その土台の作り方、つまり一人治療院が体を壊さずに繁盛するためにおさえるべき本質を、無料の動画セミナーで解説しています。メールアドレスの登録だけで見られますので、物販を考える前の材料にしてください。
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この記事で使った法令の出典
・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)。第24条(医薬品の販売業の許可)、第39条(高度管理医療機器等の販売業及び貸与業の許可)、第39条の3(管理医療機器の販売業及び貸与業の届出)、第66条(誇大広告等)、第68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)。e-Gov法令検索で条文を確認 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145
医療機器の区分(高度管理・管理・一般)は商品ごとに決まっています。個々の商品がどの区分かは、仕入れ先または製造販売元に確認してください。
