治療院のカルテ(施術録)のテンプレートを、ExcelとWordの2種類で無料配布します。整体院でも鍼灸院でも整骨院でも使えるように、項目は絞ってあります。初診用が1枚、経過記録が1枚、どちらもA4です。
ただ、様式だけ渡して終わりにはしません。カルテは「あとで見返すための記録」ではなく「次回の説明の台本」として書くと、リピートに効きます。この記事では、そのための書き方と、整骨院・鍼灸院は受領委任の規程で5年保存、整体院は法律の義務なし、という保存の線引きまでまとめました。
僕は治療院専門のコンサルタントで、昔は自分でも整体院とサロンをやっていました。そのときのカルテは紙で、気づいたら何千枚にもなっていて、久しぶりに来た患者さんの1枚を探すのに一苦労した経験があります。そういう失敗も含めて書きますね。
先にテンプレートを渡しますね
ダウンロードは下のページからどうぞ。メールアドレスを登録してもらうと、Excel版とWord版のリンクをすぐにメールでお送りします。登録したアドレスには治療院経営のメールマガジンも届きますが、いらなければメールの末尾から解除できます。
⇒ 治療院カルテテンプレート 無料ダウンロード(Excel・Word)
中身はこの2枚です。
| 枚 | 用途 | 欄 |
|---|---|---|
| 初診カルテ | 初回に1枚 | 患者さんの基本情報/患者さんの言葉(主訴・いつから・つらさ0〜10・原因だと思っていること・ゴール・心配・治療歴)/所見/施術(内容・予約枠・料金)/説明したこと(見立て・通院の目安と通過点・次回までのお願い・次回予約) |
| 経過記録 | 2回目以降、1行ずつ | 日付/回/前回からの変化(0〜10)/患者さんの言葉/施術/説明したこと・次回までのお願い/次回予約 |
Excel版はそのままタブレットやパソコンで打ち込めます。Word版は印刷して手書き用です。どちらも院の名前や欄の文言は自由に変えてください。
問診票と何が違うのかというと、問診票は患者さんが書く紙、カルテは先生が書く紙です。問診票に書いてもらったことを、問診で掘り下げて、カルテに落とす。この2枚がそろって初めて初診が回ります。問診票をまだ用意していない先生は、先にそちらを使ってください。
カルテは記録やなくて、次回の台本です
多くの先生のカルテは、日付と部位と施術内容しか書いてありません。それでも日々は回ります。回るんですが、2回目の冒頭が「その後どうでした?」から始まる院と、「前回、仕事中にビリッとくるのが一番心配やとおっしゃってましたよね。あれ、この1週間どうでした?」から始まる院では、患者さんの顔つきが変わります。
リピートは施術の出来よりも、問診と説明で決まります。これは治療院の問診はこの4つを意識しろに書いたとおりで、初診だけの話ではありません。2回目も3回目も、患者さんが「この先生は自分のことを分かってくれている」と感じるかどうかで、次の予約が決まります。
ところが、前回の患者さんの言葉は、1週間たてばこちらは忘れています。1日に10人も20人も診ていれば当たり前です。だから患者さんの言葉をカルテに残しておく。それだけで、次回の冒頭の一言が変わります。
カルテを「次回の台本」と呼んでいるのはそういう意味です。テンプレートの欄が「患者さんの言葉」と「説明したこと」の2つに寄っているのも、この2つがあれば次回の会話が組み立てられるからです。所見や施術内容は、先生が自分のために書く欄なので、短くてかまいません。

書くのは5つだけでええんです
初診で書く欄は、突き詰めると5つです。これ以上増やすと書くのが面倒になって、結局続きません。
1. 患者さんの言葉
主訴、いつからか、原因だと自分で思っていること、どうなりたいか、何を心配しているか。これを患者さんが言ったとおりの言葉で書きます。「腰痛」と書くのではなく、「朝、靴下をはくときに腰が抜けそうになる」と書く。「不安」ではなく、「来月の娘の結婚式で長く立っていられるか心配」と書く。
患者さんが自分の体についてどう考えているかを引き出す話は、問診は解釈モデルが重要に詳しく書きました。カルテの「患者さんの言葉」の欄は、その解釈モデルの置き場所です。
2. 所見
視診・触診・検査で分かったことを、あとで読んで自分が分かる言葉で書きます。専門用語で埋める必要はありません。可動域や痛みの位置など、次回に比べたいものだけ残します。
3. 施術
部位と手技、使った予約枠(何分の枠か)と料金です。これは会計と予約の管理のためなので、箇条書きで十分です。
4. 説明したこと
ここがいちばん大事な欄です。見立てとして患者さんに何と言ったか、通院の目安を何回と伝えたか、途中の通過点をどこに置いたか。たとえば「全部で10回くらい。まず3回で、朝の靴下がはけるところまでを目指しましょう」と言ったなら、その言葉のまま書きます。
通院の目安を初診で伝える理由と通過点の置き方は、通院計画を告げるべきか否かに書いています。伝えた以上は、次回にその続きを話す必要があります。だから書いておくんですね。
5. 次回までのお願いと次回予約
宿題として何を頼んだか(ストレッチ、湯船、寝る前のスマホをやめるなど)と、次回の予約の日時です。2回目の冒頭で「あれ、やれました?」と聞けるのは、ここに残っているからです。
記入例
50代の男性で、朝の腰痛で来院した方を想定した記入例です。数字は丸めてあります。
| 欄 | 初診(1回目) | 経過記録(2回目) |
|---|---|---|
| 患者さんの言葉 | 朝、靴下をはくときに腰が抜けそうになる。3週間前、庭仕事の翌日から。デスクワークで座りっぱなしが原因やと思っている。来月の娘の結婚式で長く立っていられるか心配。つらさ7 | 靴下は少しまし。つらさ5。土曜に長く歩いたら夕方に重だるさ |
| 所見 | 前屈で右の腰に痛み。右の股関節の硬さが左より強い | 前屈の痛みは残る。股関節の硬さは少し改善 |
| 施術 | 腰と股関節まわり。60分枠 7,000円 | 同じ。60分枠 |
| 説明したこと | 腰そのものより股関節の硬さが主な原因と説明。全部で10回くらい、まず3回で靴下をはける状態を目指すと伝えた | 3回目までの通過点は順調。結婚式までに歩く練習を少しずつと説明 |
| 次回までのお願い | 寝る前に股関節のストレッチを1種類。次回は1週間後 | ストレッチ継続。次回は1週間後 |
これだけ書いてあれば、3回目の冒頭に「通過点の3回目ですね。靴下、どうなりました?」と話し始められます。患者さんからすれば、先生が約束を覚えていてくれた、ということになります。
SOAPは使わんでもいい
カルテの書き方を調べると、SOAPという形式がよく出てきます。S(患者さんの訴え)、O(検査などの客観的な所見)、A(評価)、P(計画)の4つに分けて書く、病院や看護の現場で使われている形式です。
一人院なら、無理に使わなくていいと僕は思っています。上の5つの欄で足りるからです。ただ、すでにSOAPで書き慣れている先生は、そのままでかまいません。対応させるなら、Sが「患者さんの言葉」、Oが「所見」、Aが「説明したこと」の見立ての部分、Pが「通院の目安と次回までのお願い」です。テンプレートの欄の名前を変えてもらえば、そのまま使えます。
どの形式でも、抜けがちなのはAとPです。見立てとして何を言ったか、何回と伝えたか。ここが残っていないカルテは、次回の台本になりません。
保存の義務は、業態で違います
カルテを何年取っておくか、そもそも作らないといけないのか。これは業態で答えが違うので、表にしました。制度の話は長く書かないので、根拠の通知だけ末尾の出典に置いておきます。
| 業態 | 作る義務 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 整骨院・接骨院(療養費を扱う) | あり | 施術が完結した日から5年 | 受領委任の取扱規程(第3章・施術録の記載) |
| 鍼灸院・マッサージ(療養費を扱う) | あり。同意書の写しも | 施術が完結した日から5年 | 受領委任の取扱規程(第3章・施術録の記載等) |
| 整体院・リラクゼーション | 法律の義務なし | 決まりなし | 業法がない。ただし個人情報保護法は全事業者に適用 |

僕に言われなくても柔整師や鍼灸師の先生なら知っていることですが、柔道整復師法にもあはき法にも、施術録を作れという条文はありません。義務が出てくるのは、療養費を受領委任で扱うときの取扱規程です。施術録を他の記録と区別して整理し、遅滞なく記載し、施術が完結した日から5年間保存する、と書いてあります。起算は最後に来院した日ではなく「施術が完結した日」、つまり治癒や中止の転帰をつけた日です。
ついでに言うと、ネットの記事には「医師法24条で5年」と書いてあるものがありますが、あれは医師の診療録の話で、柔整師や鍼灸師には直接かかりません。保険を扱う先生の根拠は受領委任の規程のほうです。
保険の施術録は記載項目が通知で決まっていて、国が様式の参考例も出しています。その様式を見ると「初検時相談支援の内容」という欄があって、日常生活で気をつけること、患部の状態や施術方法の説明(施術計画)を書くことになっています。要するに、国の様式でも「説明したこと」を書けと言っているわけです。保険用の施術録を使っている先生は、この記事のテンプレートを自費の患者さん用に、保険用とは区別して使ってください。
自費だけでやっている柔整師・鍼灸師の先生は、規程の対象になりません。でも保険と自費で保存期間を分けると管理がややこしくなるだけなので、全部5年でそろえておくのが実務的だと思います。
整体院は、業法そのものがないので、記録の義務も保存の決まりもありません。ただし個人情報保護法は、2017年5月30日からすべての事業者に適用されています。以前あった「5,000件以下なら対象外」の線はなくなりました。氏名と電話番号と体の情報が書いてある紙ですから、鍵のかかる場所に置く、持ち出さない、捨てるときはシュレッダーにかける、という扱いだけは守ってください。
それと、義務がなくてもカルテがあるほうが身を守れる場面があります。施術のあとに痛みが出た、聞いていない、という話になったとき、争点はだいたい「何を説明したか」です。僕が2023年に取った施術過誤のアンケートでは、回答した164人のうち8割近くが、軽いものも含めて何らかの施術過誤を経験していました。トラブル自体は珍しくないんですね。説明した内容と日付が残っていれば、少なくとも「言った言わない」で一方的に不利にはなりにくい。だから「説明したこと」の欄は、リピートのためでもあり、自分のためでもあります。

紙か電子か。一人院はこう決める
テンプレートを紙で使うか電子で使うかは、新規の数で決めればいいと思っています。
新規が月に数人で、カルテが年に100枚も増えないなら、紙で十分です。Word版を印刷して、ファイルボックスに五十音順で入れておけば回ります。
新規が月に10人を超えて、月商100万円を目指しているなら、電子にするほうが楽です。理由は3つあります。
- 探さなくていい。久しぶりに来た患者さんのカルテを、名前で一瞬で出せる
- 来院前に問診票を書いてもらえる。オンライン予約のあとに問診票を送れば、初診の問診時間が短くなるし、予約から来院までの間に患者さんとの接点が1つできるので、予約の無断キャンセルも減りやすい
- 分析ができる。2回目に来た人の割合、どの媒体から来た人がよく続くか。これはカルテが紙のままでは数えられない
僕が整体院とサロンをやっていたころは紙で管理していたので、何千枚ものカルテがキャビネットを占領していました。今は選べる時代なので、増える見込みがあるなら最初から電子でいい。Excel版のテンプレートは、タブレットに入れてそのまま打ち込めば、それだけで電子カルテの入口になります。患者さんごとにファイルを分けて、ファイル名を「患者番号_氏名」にしておくだけで、探す手間はなくなります。
写真を貼りたい先生も、電子のほうが楽です。姿勢の写真を初診と5回目で並べて見せるのは、通過点の説明に使いやすい材料です。
予約管理と電子カルテと顧客分析が1つになったシステムもあります。僕が見てきた範囲でおすすめしているものはこちらにまとめていますが、新規が少ないうちは不要です。まずはテンプレートで「患者さんの言葉」と「説明したこと」を書く習慣をつけるほうが先です。
カルテが効く3つの場面
書いたカルテを使う場面は、初診の次の日からあります。
場面1:2回目の冒頭
「前回、◯◯とおっしゃってましたよね」から始める。これだけで、患者さんは聞いてもらえていたと感じます。カルテの「患者さんの言葉」の欄を、施術の前に30秒読むだけです。
場面2:通過点の確認
「全部で10回、まず3回で靴下」と伝えていたなら、3回目にその答え合わせをします。できていれば次の通過点を置く。できていなければ見立てを言い直す。どちらにしても、初診で何と言ったかがカルテに残っていないと、この会話は成り立ちません。整体院のリピート率で書いた「2回目8割、5回目5割」の目安に届かない院は、たいていここが抜けています。
場面3:来なくなった人への連絡
3か月来ていない患者さんにハガキやLINEを送るとき、「お元気ですか」だけでは返事は来ません。「結婚式、立っていられましたか」と書ければ、返事が来る確率は上がります。それが書けるかどうかは、最後に来た日のカルテに何が残っているかで決まります。休眠患者の掘り起こしの文例も、LINE公式アカウントの配信も、材料はカルテです。
カルテは書くのに1人3分かかります。1日10人なら30分です。その30分が、次回の冒頭の一言と、通過点の会話と、休眠の連絡の材料になる。記録のために書くと続きませんが、台本のために書くと続きます。
【無料動画セミナーのご案内】
どんな人を集めて、どう問診し、どう通ってもらうか。一人治療院が週休2日をとりながら月商100万円を実現するためにおさえるべき本質を、無料の動画セミナーで解説しています。メールアドレスの登録だけで見られますので、カルテを次回の説明に使えるようにしたい先生は参考にしてください。
⇒ 週休2日で月商100万 楽しく治療院を繁盛させる方法(無料動画セミナー)
この記事の要点
- カルテのテンプレート(Excel・Word)を無料配布。初診用1枚と経過記録1枚、整体院・鍼灸院・整骨院で共通
- カルテは記録ではなく、次回の説明の台本。書く欄は「患者さんの言葉」「所見」「施術」「説明したこと」「次回までのお願いと次回予約」の5つ
- 患者さんの言葉は言ったとおりに書く。説明したことは、何回と伝えたか、通過点をどこに置いたかまで書く
- SOAPは使わなくていい。使うならS=患者さんの言葉、O=所見、A=見立て、P=通院の目安と宿題
- 保存は、柔整・あはきの療養費なら受領委任の規程で施術完結日から5年。整体院は法律の義務なし。個人情報保護法は全事業者に適用
- 紙か電子かは新規の数で決める。増える見込みがあるならExcel版をタブレットで使うところから
この記事で使った制度の出典
- 柔道整復師の施術に係る療養費について(平成22年5月24日 保発0524第2号・改正反映版)別添「受領委任の取扱規程」第3章 施術録の記載(現行22):厚生労働省
- 柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(平成9年4月17日 保険発第57号)第6 施術録について:厚生労働省
- はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて(平成30年6月12日 保発0612第2号・改正反映版)第3章 施術録の記載等(21):厚生労働省
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号):e-Gov法令検索。いずれも施術録の規定なし
- 医師法(昭和23年法律第201号)第24条:e-Gov法令検索
- 施術録(様式参考例・令和6年11月改正対応):厚生労働省
- はじめての個人情報保護法〜シンプルレッスン〜(平成29年6月):個人情報保護委員会
